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整形外科 外科
リハビリテーション科

肩関節脱臼 dislocation of shoulder

 急性期の肩関節脱臼は上腕骨骨頭が外れる方向で前方脱臼、後方脱臼、下方脱臼に分けられます。ほとんどが前方脱臼です。初回脱臼の場合、靱帯や関節包が破れ強い痛みが生じます。自然に戻ることもありますが通常は整復治療が必要です。

 整復後、固定します。内旋位固定と外旋位固定がありますが、前者に比べ後者の方が再脱臼率が半分ぐらいとされています。当院では外旋位固定(3週間)をお勧めしています。ただ外旋位にすると手が外側に向くので生活がかなり不自由となります。外旋位固定が終了してもコンタクトスポーツへの復帰は二ヶ月ほどかかります。


 再脱臼率は10歳代の内旋位固定の場合90%、外旋位固定でその半分ぐらいでかなり再発しやすいです。初回脱臼後に反復して脱臼するものを反復性肩関節脱臼といい、もともと関節がゆるく外傷などの既往もなく何度も脱臼するものを習慣性肩関節脱臼といいます。いずれも何度も脱臼して生活やスポーツ活動への支障がある場合は手術を考慮します。

 再脱臼を防ぐために以前は肩周りの筋肉を鍛えるように推奨されましたが、現在では再脱臼の予防効果はみられないとされています。

 脱臼の合併症として、腋窩神経麻痺、腕神経叢損傷などの神経障害が起こることがあります。この場合、神経障害の部位、程度に応じてしびれや麻痺が出ます。
 
  
2016年6月29日(水)  肩関節脱臼

 若者に多く発生し、その多くが前方脱臼であり、加えて前方脱臼は高率に反復性肩関節脱臼に移行します。ここ最近では、外旋固定法(外転30°+外旋60°)が徐々に浸透してきています。外旋固定法は、MRIでのスタディにおいて、剥離した関節唇と下関節上腕靱帯の整復位が一番得られるポジションということが分かっており、その位置で固定することにより再脱臼が起こりにくくなることが分かっています。


 整復方法はさまざまなものがありますが、いずれも愛護的に行うようにします。通常、無麻酔で行いますが、整復困難な場合は関節内への局麻剤の注射、もしくは鎮痛剤(ソセゴン、セルシン)、静脈麻酔薬(イソゾール、ラボナール)などを投与します。

 整復法
1.Milch法
 仰臥位で肘関節を屈曲位、片方の母指で上腕骨頭を固定。次いで肩関節を外転・外旋、最大外転位で骨頭を押し上げる

2.挙上牽引法
 尾側方向の牽引を行いつつゼロポジションにまで持って行く。なかなか整復が得られないときは関節窩に向かって骨頭を押し上げる

3.Stimson法
 腹臥位でベッドから患肢を垂れ下がるようにし、手首に重錘(4-10kg)をかけて下方に牽引。

4.外旋法
 仰臥位で肩関節内旋位からゆっくり外旋位にし最大外旋位で保持する。

 いずれの方法も、痛みが強く筋肉が緊張しているときはなかなか整復できません。リラックスして力を抜くように話をしながら、経時的に筋力が落ちてくるのを待ちます。

固定法(初回脱臼)

 外旋固定法(外転30°+外旋60°) 一日23時間装着(風呂、着替えのみ脱着)、3週間装着。剥離した関節唇と関節上腕靱帯が骨に修復されるためには、両者間に血腫が存在する必要があり、遅くとも受傷3日以内に固定を開始することが望ましい。3週間の固定終了後、自動運動を開始し可動域改善を図ります。7%に関節拘縮がみられたという報告がありますが、いずれも自体で行う他動的可動域訓練で改善しています。

 実際に外転法は60°も外転させた固定であるので手の先端がかなり外方に出っ張ります。このためバスなどの通学や通勤などに支障を来すことがあります。もちろん固定期間は自転車・バイク、クルマ等は運転できません。生活の制限がかなりあるので、よく治療法を理解した上で行う必要があります。