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整形外科 外科
リハビリテーション科

半月板損傷 meniscal lesions of the knee

 半月板は膝の関節内に挟まっている軟骨様のクッションです。膝を安定させる役目もあります。内側と外側にそれぞれあり内側半月板、外側半月板といいます。半月板損傷はスポーツによる外傷やオーバーユースや加齢による変性によって起こります。半月板損傷はその形態から「水平断裂」「縦断裂」「横断裂」「変性断裂」などに分類されます。症状は荷重時の膝の痛みです。ひどくなると水がたまったりロッキング(剥がれた半月板が関節に挟まってしまう状態)が起こります。

 半月板は血行が少なく、いったん傷つくと治りにくいです。外1/3は血行があるので1cm未満の断裂は治ることもありますが内1/3は血行が無く保存的に治るのは難しいです。

 以前は半月板損傷が見つかれば切除術を行っていましたが、術後、変形性関節症となるケースが多く、出来るだけ手術をせずに保存的に加療するようになりました。半月板損傷が見つかったらすぐに手術をするのではなく、まずは保存的な治療を行います。外傷の場合、一ヶ月程度の保存加療で痛みが改善することもよくあります。

 治療に抵抗して痛みが継続する場合は、関節鏡を使った半月板手術を行います。これには切除術と縫合術がありますが、最近では可能であれば縫合術を行うようになってきています。切除するにしても最小限にします。これは半月板切除後に変形性関節症が起こりやすいためで、クッションである半月板は出来るだけ温存した方が良いという考えに基づいています。
 
 
 膝関節内の痛み

 膝の痛みは膝関節内部から起こることもよくあります。膝関節内の知覚神経は、関節包、滑膜、半月板の外1/3、靱帯付着部に分布しています。したがって関節軟骨、十字靱帯中央部、半月板内1/3には知覚神経が分布しておらず、それらの痛みは損傷に伴う二次的現象(炎症、物理的圧迫、引張り)により周辺の知覚神経を刺激していると考えられています。


  半月板損傷

 半月板損傷はスポーツなどによる単独損傷と靱帯損傷に合併するものに分けられます。また年齢により変性が進みはっきりとした受傷機転が無くともいつの間にか損傷していることもあります。半月板の神経分布は外周のいわゆる外1/3(outer zone)にあり、それより内側には神経組織はみられません。したがって外側の損傷は痛みが出ますが内側の損傷は、間接的にずれや圧迫、炎症などで神経受容体を刺激しないと生じません。 

 神経と同様に血管も外1/3(10−30%)まで入っていますが、そこより内側は血流が無く損傷した場合は治癒しにくいとされています。

<断裂の形態分類>

 ・縦断裂:外1/3に多く、陳旧性ACL断裂膝に多い
 ・バケツ柄断裂:縦断裂が大きくなり半月板が顆間に嵌頓した状態
 ・横断裂:スポーツ動作における強い軸圧とひねり動作で発症、外側不完全型円板状半月板に多い
 ・フラップ(弁状)断裂:断裂の一端が自由端なっている
 ・水平断裂:加齢による変化で生じることが多い。深屈曲で痛みが強くなる、半月嚢腫をしばしば伴う
 
<円板状半月板の損傷形態MRI>
anterior-central shift 半月板が前方にシフト
posterior-centoral shift 後方にシフト
成人例では水平断裂を伴うことが多い

<hypermobile meniscus>
 過可動性半月板。外側半月板でロッキングを起こすが、画像所見はほぼ正常で診断に苦慮する

<損傷パターン>
 スポーツでは外傷性、オーバーユースがある。
 外傷性はACL損傷に伴うもの、単独損傷、円板状半月損傷があり、手術加療を行うことが多い
 オーバーユースは全十字靱帯不全膝の内側半月板後節損傷、円板状半月板水平損傷、加齢による変性、水平断裂がある

<半月板損傷による疼痛>

 半月板損傷の症状:引っかかり感、ロッキング、膝痛、水腫、時にずれる感じ→物理的な引っかかり、半月板機能の破綻による関節軟骨障害症状(水腫)
 痛みは神経組織のある関節包や滑膜組織、半月板外1/3、十字靱帯の両端を刺激したときにでる(無血行野のみの損傷では半月板そのものの痛みは出ず引っかかるときに出る)
 水平断裂は内部に治まる限り痛みは出ない→一部フラップになれば引っかかり感+、水辺断裂のみで痛みが出る場合は、他の原因(半月板機能低下による軟骨変性)を考える
 血行野(神経がある)の損傷では関節包の刺激によって関節裂隙に圧痛が生じる。血行野であるため急性期は関節内血腫を認める

<半月板損傷に対する治療>

 手術(鏡視下に切除、縫合)、保存治療。
 手術適応:半月板温存すべき損傷(辺縁部損傷のある急性損傷)、急激な機能低下をきたす状態(横断裂が辺縁部に至る急性損傷)
 *水平断裂は保存的治療が奏功することが多い。手術との比較でも臨床成績は差が無いと報告されている

・保存療法の適応と実際

 上記の手術適応がない場合、保存療法を行う。疼痛が強い場合は関節注射、あるいは疼痛部位にブロック注射をおこなう。
 半月板損傷はその痛みのために周辺(関節包、膝蓋下脂肪体、二関節筋)の拘縮を伴っていることが多く、入念なストレッチを指導する
 これらの拘縮が改善しても、荷重時や可動域の疼痛が残存し、軟骨変性を伴っていない場合は半月板症状の残存と考えて手術を行う

・手術療法の適応と実際(代表的損傷と手術療法)
 1.辺縁部急性損傷(縦断裂、バケツ柄断裂) 内側半月板の縦断裂、バケツ柄断裂の多くは縫合の適応。ACL断裂再建と同時に。多くは中節から後節。
 2.不完全型円板状半月板の横断裂 横断裂が関節包辺縁までの距離で切除か縫合かを決める。辺縁から5mmを残存できるなら部分切除。残存半月板が5mm以下になるなら縫合術
 3.内側半月板FLAP損傷を伴う水平断裂 壮年期に多い。保存か手術かコンセンサスなし。関節水腫無く、McMurray test陽性で引っかかりに伴う疼痛が主な場合は手術適応。術後、膝蓋下脂肪体の痛み、膝蓋骨の可動性が悪化しやすく、術後早期から関節包の癒着が起こらないように術後早期よりリハビリを開始する。
 4.完全型円板状半月板
  ・辺縁部の断裂がない場合:no shift type は症例の1/3に辺縁不安定性を伴うのでsnapping(弾発)現象のあるものは縫合の準備をする。切除は前節、後節8mm、中節6mm残す中節後部は水平断裂が露出することが多く、小児ではそのまま、成人例ではfast-fix
  ・辺縁部に断裂がある場合:形成切除後、辺縁部を縫合する

・orthipedics 2016.3 p18-21 膝の痛み 大阪市立大学医学部 橋本祐介先生の著書よりまとめました。
 
本日のコラム14 半月板損傷はなぜ治りにくい?

 膝関節のクッションとして内側と外側にぞれぞれ半月板があります。半月板が治りにくいのは、血流が外1/3にしか来ておらず、内側の3分の2は血流が無く、断裂しても治す材料が血液を通じて運ばれてきません。このため血流のある外1/3は保存治療や縫合手術により治癒が期待できますが、内3分の2は血流が無いため治ることは難しく、保存療法で生活に支障がある痛みが残存する場合は、切除術を行います。手術を行う場合は外1/3は縫合術、内3分の2は切除術をします。

本日のコラム15 中高年の半月板損傷は原則保存療法を行う

 中高年の半月板は、変性断裂といって老化による変性が起こり、その部分が徐々に亀裂が入り断裂を形成します。外傷がや症状が無い方でもMRIでみるとすでに変性し断裂を起こしていることがよくあります。従って手術適応は限られ、たびたびロッキングを起こしたり、激しい痛みが改善しない場合などを除いて、原則、筋トレやストレッチなどの保存治療を行います。
 
 
本日のコラム594 内側半月板変性断裂

 中高年に多く見られる。MRIで偶然見つかることもよくある。加齢や過度の力学的ストレスにて部分的な変性がつながって断裂になる。フラップ形成しバケツ柄断裂が多い。変形性膝関節症を併発していることも多く、基本的には保存治療を行う、治療に抵抗性や変形性膝関節症の程度により手術を選択する。最低3ヶ月間の保存療法を行い、X線やMRIで変形性膝関節症の進行が無い(Grade1以下)場合に手術を行うことが推奨されている。(欧州スポーツ外傷・膝外科・関節鏡学会)

 →過去には半月板切除術が多くの例に行われたが、予後に保存療法とそれほど差が無かったので、手術適応はかなり限られてきています。バケツ丙断裂などで症状が強い場合などで行う。

 
   
本日のコラム26 サッカーでの半月板単独損傷は外側半月板とりわけ前節に多いのには理由があった。

 これは興味深い話です。わたくしもサッカー、フットサルをしていますが、やり過ぎると右膝外側前方に痛みが出てきます。しばらくすると改善しますので、あまり気にせずやってます。

 阪大整形外科 米谷泰一先生の報告(*1)では、外側半月板前節損傷はまれではあるが、サッカー選手、とりわけディフェンスの選手に多く、また損傷側はサイドライン側が多いとしている。これは、サイドラインから前方にインフロントキックを中心としたロングボールを前線に供給するために、蹴り足の膝には外反・外旋する力が働き、外側半月板前節に大きな力が繰り返して働き、損傷するとしている。

 確かに、ディフェンスをするとき、ロングボールを前に供給することによって試合局面を大きく転換できるので、どうしても多用しがちとなります。しかも相手も競ってくるので、無理な体勢で行うことも多く、膝への負担を増加させているのだと思われます。

 治療は、変性が体部全体に広がっている場合や多断裂が予想される場合は、切除術となる可能性が高いので、3-6ヶ月の保存治療を優先させます。はっきりとした単純な縦断裂の場合は、縫合による半月板機能温存が期待できるので、可及的な手術の選択を行います。

 保存治療は、3-6ヶ月の期限を設定し、モチベーションを上げながら、消炎鎮痛剤(内服、外用)、消炎鎮痛処置、ヒアルロン酸関節腔内注射を行い、また過負荷を避けるために、膝の過伸展、キック、膝関節の深屈曲を避けます。またバランスや体幹〜四肢のタイトネスの改善なども必要です。症状の改善に合わせて運動強度を段階的に上げます。

 運動強度を上げていく時に、症状が悪化する場合は、手術を考慮します。

参考:*1 外側半月板前節部損傷 米谷ら 整・災外 58:1695−1702、2015 
 
 
本日のコラム339
 半月板後根断裂

 半月板の構造

 内側半月板:前角、前節、中節、後節、後角、後根
 外側半月板:前節、中節、後節、後根

 内側および外側半月板は、それぞれ前方と後方で、脛骨後面中央に付着し、その近傍で損傷を根損傷といいます。

 内側半月板後根断裂は、日常生活動作に伴う軽微な外傷により発症し、中高年女性好発します。この断裂を放置すると、特発性骨壊死が生じたり人工膝関節全置換術に至ることがあるとして、上記診断と適切な治療を行う必要があるとされています。

 後根の断裂により、半月板中節より後ろが後方へ逸脱し荷重を分散して支えることが出来ずに骨壊死やOAが起こりやすいと考えられています。


 後根断裂は、MRI で診断を行い、関節鏡にて縫合手術を行います。