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整形外科 外科
リハビリテーション科

 
疲労骨折 stress fracture

 疲労骨折は運動等による応力が骨へのストレスを与え徐々に骨折してくる状態をいいます。通常の骨折は瞬間的に大きな力が加わって瞬時に起こりますが、疲労骨折はより小さな外力によって骨の微小な損傷が繰り返されて起こります。例えとして「針金を何度も曲げていると折れてくる。」という説明をしています。どの骨にでも生じる可能性がありますが、スポーツの種目によって特定に部位に起こりやすい傾向があります。同じ動作を繰り返すことによって生じます。クラブ活動で同じメニューをこなしても大丈夫な人と疲労骨折する人に分かれます。練習メニューが過度であると発症率が上がります。部活での練習メニューはこういった障害が発生する率を抑えるように適正な量にする必要があります。

 個々の発生要因としては、身体の柔軟性、フォームの乱れ、体重、靴や路面の問題などがあります。やはり適正なフォームが崩れると体への負担が大きくなり疲労骨折が起こりやすいです。グランドコンディションに関しては、よく走り込んだ軟らかい土なのか乾燥して固まった土なのか、またアスファルト等の硬い路面なのか、そういった違いで負荷が違ってきます。シューズは上級者用の軽く薄いものは障害が出やすいです。初心者は特に初心者向けに作られたものを履くと良いでしょう。個々の問題として、扁平足や凹足など足の裏のアーチが変形していると起こりやすいです。また女性の場合、無理なダイエットで骨量が減り骨が脆弱になって起こることがありますので、適切な食事を摂ることも大切です。

 診断は骨折部の痛みや圧痛があり、レントゲン、CT、MRIを行います。疲労骨折の初期にはレントゲンで写らないことがほとんどで、必ず2−3週間後に再撮影を行うか、医療環境に問題が無ければ早期にMRIを行います。MRIでは骨髄の浮腫像や骨折線がみられます。

 治療の原則は、痛みを起こした運動は控えることです。松葉杖などで荷重を控えて、ギプスや装具で固定を要するケースもあります。部位によっては痛くない動作は可能です。遷延治癒、偽関節、完全骨折になったものはギブス固定・装具や免荷、手術等が選択されます。

 運動再開の目安は疲労骨折部を押しても痛くないこと、レントゲンで骨折が改善していること、ホップテストなどの負荷テストで痛みが出ないこと(上肢や体幹では原因動作で痛みが出ないこと)、これらを満たす場合に少しずつ負荷を開始します。自己判断で痛みのでる動作を行ったり、中途半端にな運動の休止や運動を再開したりすると治療の遷延化や偽関節、完全骨折になってしまうので注意が必要です。特に部活ではさまざまな間違った情報が流れます。これは好意的に教えてくれる情報なのですが、他のケースと同じとは限りませんし、同じ部位の疲労骨折でも治り具合に差が出ることもあります。


 <疲労骨折の超音波所見>
 後光サイン:骨膜肥厚像
 螺髪サイン:仮骨形成

 <難治性疲労骨折> 強い伸張力+血流に乏しい状況で起こる。特に治りにくいのは以下の部位

 Jones骨折 右第5中足骨 早期で保存治療あり 手術のタイミングはプレイできなくなった時が基本。完全骨折になった時点で行うことが多い。完全骨折前は競技可能であれば保存療法を行い、疼痛に応じて完全骨折前でも手術を考慮。
 脛骨前方(跳躍型) 早期は4−8ヶ月運動休止 手術→競技継続する場合は手術が望ましい
 足舟状骨 保存、骨折部硬化で難治 6−8週間完全免荷・固定(短下肢装具)早期診断でほとんどが保存治療可能。完全骨折、粉砕骨折で手術。
 大腿骨頚部 伸張型(頚部の上から折れるタイプ) 手術
 膝蓋骨 横骨折は下端、縦骨折は外側、早期は保存、早期復帰希望例や完全骨折は手術 
 足関節内果 保存療法が基本(6−8週間免荷ギプス固定後徐々に荷重。疼痛を指標に運動量を増やし3−4ヶ月で完全復帰を目指す)、手術は転位例、遷延治癒・偽関節、保存療法不成功で行う。ハイレベル競技者の場合で骨折線が明らかな場合は手術(6週間でランニング開始、10週で完全復帰を目指す)
 距骨 まれ 免荷など 治療法は確立していない
 母趾種子骨 保存が原則 痛みで歩行障害→背屈制限シーネ固定 最短でも3週間は免荷 アーチサポート・足底板 6ヶ月以上抵抗性→種子骨摘出術他
 
 
部位別 疲労骨折まとめ
 個々の部位によって対処法や治療期間が異なりますので注意が必要です。(参考 MB orthop Vol25 No13 2012ほか)

1.疲労骨折の部位別治療法
<上肢> 上肢でも繰り返して力が加わると疲労骨折を起こします。有鈎骨鈎疲労骨折、肘頭疲労骨折、舟状骨疲労骨折が有名です。 いずれの疲労骨折も初期症状は痛みのみで、レントゲン撮影では所見を認めないことが多いので早期診断にはMRI、CTが有効。また経時的にレントゲン撮影を行うようにします。

 
 上腕骨骨幹部 完全骨折は手術、状況によりFunctional braseを用いて保存治療。早期は保存治療4−6週間の局所安静。更に4週間掛けて段階的にトレーニング 競技復帰には4−5ヶ月
 上腕骨内顆部 まれ 初期は保存。
 肘頭 投球動作による障害。骨端線閉鎖前は骨端線の離開、閉鎖不全となり、成長し骨端線が閉鎖した後は疲労骨折となりる。治療は投球動作を禁止し、身体の固さを改善するストレッチなどを行います。3-6ヶ月。
 尺骨骨幹部 1-2ヶ月 保存 競技を中止 痛みが強ければ外固定(肘関節〜手部 キャスト)
 橈骨 遠位1/3に多い 中央 茎状突起にも生じる 局所安静のみで改善 ギプス不要 4−6週間 再発した茎状突起疲労骨折→切除

 有鈎骨鈎疲労骨折はバット、竹刀、ゴルフクラブ、テニスなどのラケットの端が直接的に有鈎骨鈎を繰り返し圧迫して起こります。保存的治療は時間がかかり骨癒合しにくいので、手術的に骨片の摘出や骨接合術が行われます。
 
 手舟状骨疲労骨折は手関節を背屈する動作を繰り返すことによって軸圧が加わり生じます。当初は痛みだけのことも多く、放置して偽関節になることも多いです。

 第2中手骨 1-2か月
 有鈎骨鈎部 偽関節多い。トップレベルの選手は切除手術。(スポーツに影響なし) 新鮮例:4-6週間のギブス等の固定(局所安静のみで固定不要とする意見もある)
 手舟状骨 手関節背屈で茎状突起と舟状骨が衝突 嗅ぎタバコ窩の疼痛 早期はDTJスクリュー固定+橈骨茎状突起切除 偽関節 骨移植+DTJスクリュー+橈骨茎状突起切除

<体幹>

 鎖骨 まれ 多くが鎖骨近位端。(中央、遠位もあり) 運動の休止、制限。復帰は上肢に荷重がかからないスポーツは2−3ヶ月、体操など荷重のかかる場合は6ヶ月。

 肋骨  第一肋骨疲労骨折:斜角筋群が繰り返して収縮して起こります。ウエイトリフティング、野球、剣道、柔道、チアリーディング、新体操など上肢の挙上運動を繰り返すことによって発症します。この疲労骨折は頭の中に疲労骨折かも知れないと思うことが重要で、何も考えないと見逃してしまいます。遷延治癒や偽関節となると厄介です。症状は頸部から肩にかけての痛みです。頸部疾患や肩疾患と誤診されることが多いです。初期は運動を控えた保存的治療を行います。化骨が大きくなったり、偽関節になると腕神経叢を圧迫し筋力低下・萎縮、痛み、しびれなどが出ることがあります。保存的治療で効果が無い場合は、手術を考慮します。腕神経叢への圧迫が高度の場合は、第一肋骨切除術を行います。背中〜肩の痛みに注意。

 第一肋骨:1-2ヶ月の局所安静、上肢の挙上中止 2-3ヶ月で復帰目標 頻回に上肢を挙上する種目で起こる。
 ゴルフ骨折:利き腕と反対側の4-7肋骨に多い。2-4週安静、その後ストレッチ、2-3ヶ月後から原因動作を開始。

 胸骨 極めてまれ 疼痛を誘発するスポーツの完全中止 疼痛の軽快には2−15ヶ月
 肩甲骨 極めてまれ スポーツで生じた場合は、保存療法(3週間程度の外固定) リバース型人工肩関節の術後に生じたものは骨融合率50%とされる

 腰椎分離症(リンク先参照)

 棘突起 まれ ゴルフのスイング練習(アマチュアに多い) 捻る動作の運動 急激な痛みで発症。僧帽筋や菱形筋が付着するC7,TH1に多い レントゲン正面で棘突起陰影が2個(二重に)。側面像で遠位骨片が後下方に転位。転位が無いケースや早期はMRI。治療は保存療法。4−6週間の局所安静。多くの報告で頚椎カラー装着。通常レベルまでの復帰は3週間〜4ヶ月と幅あり。

 スポーツ損傷としての仙骨疲労骨
 仙骨は脊椎の一番下部で骨盤の後面を形成する骨です。仙骨疲労骨折は高齢者を中心とした脆弱性骨折、出産前後、腰仙骨固定術後、スポーツ障害として生じるものがある。
 殿部痛、坐骨神経痛、仙腸関節痛、腰痛などの症状が出ますので腰部疾患や仙腸関節炎との鑑別をしっかりと行います。仙骨疲労骨折は通常、レントゲンでは所見がなくMRIを行う必要がある。
 治療は原因となった運動の休止です。仙骨部に負荷のかかる運動は休止し痛みが生じない上肢や体幹上部のトレーニングを行うようにします。数週間から数ヶ月程度で痛みが改善し復帰できるようになる。
 
 恥骨 恥骨下枝に多い。レントゲン、MRIで確認できたら、ただちにランニング等の運動を休止します。2-4ヶ月ランニング等の中止または制限で骨癒合が得られることが多い。痛みが無くなったらジョギングの開始。positive standing sign 陰性化が重要。(患肢での片脚立位で他足を上げてズボンをはく動作で患側鼠径部に痛み)

<下肢>
 
 足の疲労骨折

 足の疲労骨折は足関節内果、舟状骨、踵骨、第5中足骨基部、2−4中足骨骨幹部、第1MTP種子骨、母趾基節骨などに起こりやすい。
 疲労骨折ははっきりした受傷機転が無く徐々に痛んできます。疲労骨折部は腫れていたり押さえると痛みがでる。昔は行軍で起こることもあったが、今はアスリートが中心。
 疲労骨折になる人は基本的に頑張り屋さんで一所懸命に運動に取り組んでいる場合がほとんど。運動を続けたいために無理をすると悪化する。
 足関節内果骨折は足関節の腫れや痛みが出る。レントゲン(前方に向かう斜骨折が特徴)では早期の場合、所見が無いこともあるので疑われる時はMRIを行う。スポーツ復帰までは保存的治療で4-5ヶ月、手術療法で2-3ヶ月かかるので 早期復帰を望む場合は手術を選択する。(内固定材はスポーツ活動をする限り抜釘しないのが原則)また遷延治癒や偽関節になった場合も手術を考慮する

 
 大腿骨 保存2-4ヶ月 完全骨折 手術
  
 大腿骨頚部 まれ。軍人やアスリートなどがオーバーユースにより起こることがあります。初期はレントゲンで写りません。MRIが有効。治療は転位の無い圧迫型(頚部の内側部分)は基本的に保存療法を行う。ベッド上安静から免荷歩行を行う。手術は、転位のある場合、上方から下方へ骨折線がつながっているケース、牽引型(頚部の上方部分)で内固定を行う。運動中に股関節周辺に誘因無く強い痛みが出る。2種類あり。大腿骨頚部の内側は上下方向の圧力により生じるのでcompressionType 予後が良い。大腿骨頸部外側は牽引する力により引き裂かれるように疲労骨折が生じるのでtransverseTypeと呼ばれ、予後不良となることがある。治療 文献ではいずれのTypeも免荷させていることが多い。発症後4週間の完全免荷。もしくは診断確定後4週間程度の完全免荷。6週間で全荷重。8週間で復帰。→compression typeは手術に移行するケースが多い。

 compression type ;スポーツ活動の禁止、骨癒合が得られたら徐々に再開→頸部内側下方から生じる
 transverse type ; スポーツ活動の禁止に加えて完全免荷歩行。骨折線がみられ安静加療で改善しない場合は手術を考慮。頸部外側上部から生じる。
 治療期間短縮に低出力超音波パルスLIPUSが有効との報告がある。
 早期にはレントゲンに出ない。MRIが有効。
 
 大腿骨疲労骨折 長距離選手に多い。頚部、顆上部、骨幹部。痛みの部位が特定しにくい。2-4ヶ月で復帰。完全骨折や転位例は手術。

 膝蓋骨 4−6週 2-4ヶ月後復帰 膝を深く曲げてジャンプする競技で起こりやすい。バレー、バスケット、ハンドボールなど。初期はレントゲンで分かりにくく、MRIやCTが有効。転位例、遷延治癒例は螺子固定などを行う。
 下腿骨 リンク先参照
 脛骨疾走型 1-2ヶ月ランニング、ジャンプの中止.。ランニングをする種目であればいずれでも起こります。中高生で6割を占めますが、小学生での報告例もあります。初期には、レントゲンの正面・側面像では描出されにくいので斜位像を追加する。ランニング・ジャンプの中止で復帰までに約2ヶ月、長くとも3ヶ月以内。

 脛骨跳躍型 難治性。バレーボールやバスケットなどジャンプを繰り返す種目でみられます。脛骨前面中央に圧痛が出ます。ランニングやジャンプなど3-6ヶ月ほど中止し経過をみますが、治りにくく、経過が長く、早期復帰を望む場合は髄内釘固定や骨移植術を行いますが、再発例、難治例が多い。 

 脛骨内顆疲労骨折 1-2ヶ月休止
 足関節内果 難治性  踏み込みやジャンプの動作で内反、外反するサッカー、バスケット、フィギュアスケートなどでみられます。レントゲンでは分かりにくく、MRI、CTで早期診断します。症状に応じてギプス、免荷、負荷のかかる運動の休止します。関節面の骨折線は消失しにくく運動再開後、再発することもあります。転位例、遷延治癒、再発は螺子固定を行います。保存療法が基本(6−8週間免荷ギプス固定後徐々に荷重。疼痛を指標に運動量を増やし3−4ヶ月で完全復帰を目指す)、手術は転位例、遷延治癒・偽関節、保存療法不成功で行う。ハイレベル競技者の場合で骨折線が明らかな場合は手術(6週間でランニング開始、10週で完全復帰を目指す)

 腓骨 跳躍型は近位、疾走型は遠位と言われていますが、ランニングでも近位には発生します。1-2ヶ月のランニングやジャンプの中止

 足舟状骨 難治性 ギブス固定6-8週間+完全免荷または完全免荷+松葉杖(約三週間) 10-12週でジョグ開始  陸上やバスケとボールなどの運動で足背部痛が慢性的に続く場合は疑うようにします。レントゲンでは写りにくくCT,MRIを行います。転位の無い新鮮例は4-8週間の免荷。完全骨折や遷延治癒、転位例は骨せん孔、螺子固定。偽関節は掻爬、骨移植 、螺子固定。手術適応 ギャップのある完全骨折、遷延治癒、偽関節、早期復帰を希望するケース

 ほとんどがスポーツ選手。トップアスリートに多い。レントゲンでは見逃されやすい。CT、MRIが有効。骨硬化像が骨折周辺にみられる場合は難治性。螺子によるによる内固定で外固定は不要。
 CT像:I字型、J字型、U字型、Y字型。完全型と不完全型。骨硬化ありとなし
 症状:古典的には舟状骨足背に圧痛。早期にははっきりした圧痛無く、足関節痛のこともある。
 検査:レントゲン→CT、MRI
 治療:保存:免荷と固定、膝下ギプス固定で松葉杖による完全免荷6−8週間(施設によりPTB装具)。荷重開始時はアーチサポート。
    後脛骨筋が付着しているため筋力・可動域訓練、開始時期や強度はコンセンサスなし
     手術:骨硬化像+、開大が1mm以上、再発例はいずれも手術考慮、手術後も4−6週間完全免荷必要。PTB装具。アーチサポート。

 立方骨 免荷や外固定で良好に治癒する
 距骨 難治性 舟状骨骨折などに合併することも多い 治療法は確立されていない 免荷などの保存療法が行われる
 踵骨 経過とともに帯状骨硬化像 痛む動作の休止 安静、免荷。早期はX線撮影で異常所見に乏しい。→MRIが有効。過負荷による狭義の疲労骨折と関節リウマチ、骨粗鬆症、ステロイド投与などによる脆弱性骨折がある。
 症状は踵部痛で、誘因無く起こり、徐々に悪化する。治療:ほとんどが保存治療。原因となる活動の中止(または軽減)、局所安静。荷重時の痛みが強い場合は松葉杖で免荷。ギプスなどの固定は必要ないが、症状が強い場合は痛みの軽減目的にておこなう。鎮痛剤おやアイシングも有効。ヒールパッドやリールリフトになる足底板。6−8週で疼痛が消失したらトレーニングを徐々に再開。8−12週で復帰を目指す。保存で改善しない場合は手術;スクリューなどで内固定。復帰には術後3−4ヶ月。

 中足骨 骨幹部に起こるものは1-2ヶ月、運動の休止で改善。完全骨折はギブスまたはシーネ 歩行時痛が強ければ免荷。 完全骨折で無ければ4-6週でジョグ開始。 第2、第4中足骨基部に起こる疲労骨折も難治性で手術を要することもある。
 第5中足骨Jones骨折 難治性、再発しやすい。手術を要することが多い。 早期で保存治療あり 手術のタイミングはプレイできなくなった時が基本。完全骨折になった時点で行うことが多い。完全骨折前は競技可能であれば保存療法を行い、疼痛に応じて完全骨折前でも手術を考慮。
 脛骨前方(跳躍型) 早期は4−8ヶ月運動休止 手術→競技継続する場合は手術が望ましい

 母趾種子骨 難治性 地面を蹴る種目 女子で外反母趾例に多い 有痛性二分種子骨と鑑別(治療は同等) 保存が原則 痛みで歩行障害→背屈制限シーネ固定 最短でも3週間は免荷 アーチサポート・足底板 6ヶ月以上抵抗性→種子骨摘出術、 転位例は螺子固定
 母趾基節骨 非常にまれ 保存は4−12週の運動禁止や5−6週外固定や免荷。(確立された治療方法はない) シーネ固定+免荷6週間など。保存治療3ヶ月以上で手術適応。


 脛骨跳躍型疲労骨折

 脛骨の跳躍型疲労骨折は、難治性の吸収型疲労骨折であり、仮骨形成に乏しく、治療には長期間を要します。

 骨形成型の疾走型疲労骨折とは異なり、6週間程度の運動制限では治癒しません。短期間の局所安静で痛みは改善し、レントゲン所見にも大きな変化が出てこず、安易に運動を再開すると更に悪化します。慢性化した例や早期復帰をめざす場合は、髄内釘挿入を行います。一般の脛骨骨折と異なり骨折部の固定性、髄内血流よりも、伸張ストレスを回避するために髄内釘を骨皮質に密着させます。横止スクリューは不要です。

 症状はランニングのストップ時やジャンプの着地時の痛みが中心で運動強度が上がれば痛みも増強します。症状が悪化すると階段昇降や起床時、動き始めの痛みが強くなります。初期は2週間程度の安静で症状が改善するため、受診すること無くそのまま運動を自己判断で再開してしまうケースが多いとされています。慢性化してしまうと保存療法には抵抗性で4ヶ月の運動休止を行っても治癒率は50%以下とされています。また経過中に完全骨折となることがあります。慢性例では脛骨骨幹部前方の痛み、腫れ、圧痛があり、レントゲンで嘴状の仮骨形成とBlack−lineと呼ばれる骨吸収像もしくは明瞭な骨折線を認めるようになります。初期にはレントゲンの変化がみられないので注意が必要です。

 スポーツの種類としては、バレーボール、バスケットボール、クラッシック・バレエに多くみられ、その他、陸上、体操、ハンドボール、野球、テニス、チアリーディング、バトミントン、アメフト、卓球でみられた。(関東労災病院における報告)

<治療方針>

 保存的治療は完治が困難なことが多い。

 初期例:発症1ヶ月程度の初期であれば、保存療法が有効。ランニングなどの下肢に負荷のかかる運動は6週間休止します。ハムストや殿筋の筋力強化は行います。徐々にランニングを開始しますが、ジャンプ動作や急激な力がかかる動作は控えます。3ヶ月程度、運動強度の制限を行います。

 慢性化例:二か月程度の運動制限を行い、殿筋とハムストリングの強化で治癒例もあるとされています。骨折部が深部に進行することあり。

 手術:運動中止が困難で確実にスポーツ復帰を期待する場合や完全骨折の危険性が高いもの、長期罹患例は手術の対象となります。髄内釘はリーミング径より0.5mm細い髄内釘を挿入し、骨皮質との密着をはかります。横止スクリューは使用しない。

 後療法:手術翌日より荷重歩行可能。一週間程度で松葉杖は不要となります。術後一週間から自転車エルゴメーターを開始。3−6週間して挿入部の刺激が緩和すれば、レッグエクステンションやハーフスクワットなどの筋トレを行います。6週間以降、創通が軽度となれば、ランニングの許可。術後10週後に筋力測定実施し、健常比比80%以上の筋力であれば、徐々にスポーツ復帰を行います。3ヶ月より競技復帰に向けてトレーニングを高め、4−6ヶ月で復帰をめざします。

 

  
思春期女子アスリートのスポーツ障害 疲労骨折

 女性アスリートの三主徴として
・骨粗鬆症
・視床下部性無月経
・摂食障害

2007年;摂食障害→摂食障害の有無を問わない利用可能エネルギー不足(Low energy availability;LEA)と改められた。骨粗鬆症が無くとも疲労骨折を起こすことがある。骨量の管理は躯幹骨DXAを行う。LEAに起因する無月経や体重減少により骨塩量の低下をみた場合は、エネルギー摂取量を増加させ、エネルギー消費量を減少させる。摂食障害が疑われる場合は専門家へ相談する。骨塩量は躯幹骨の二重エネルギーX線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry)を行う。YAM値ではなく同年との比較値(Z score)を用いる。

*骨量の推移をみるには腰椎+大腿骨DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)が良いとされており、手やかかとでの測定は不正確といわれています。
 
 
本日のコラム604 中足骨疲労骨折

左から6週間目、初診時、初診直後のMRI

 症状が出てから日が浅いとレントゲンには何の所見もありません。臨床所見として同部に圧痛を認めるのみです。
MRIは症状出たときから画像に変化があるので、早急に鑑別診断を行う場合にはとても有効です。