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整形外科 外科 リハビリテーション科

上腕二頭筋長頭腱断裂

上腕二頭筋長頭腱断裂

上腕二頭筋とは力こぶを作ると盛り上がる筋肉です。二頭とは頭が二つに分かれて腱となって二カ所の骨に付いているという意味です。三頭筋なら三カ所、四頭筋なら四カ所です。

上腕二頭筋には長頭と短頭とふたつあります。このうち長頭は上腕骨の結節間溝を通って肩関節包に包まれるように走行し肩甲骨の関節窩の上方に付着します。

この腱が経年変化で脆弱になったり、繰り返し使うことによって断裂することがあります。断裂すると力こぶが大きく出るようになります。なにか最近こんな風に力こぶが出るようになったと心配して来院されるます。

長頭筋腱が断裂しても実際、肩や肘の動作は問題なく力も少し落ちますが生活には支障がないとされています。昔は手術療法もあったようですが、いまは手術せずに保存的に様子を見ます。

エビデンス:長頭腱断裂の多くは保存療法で良好・腱板断裂との合併

上腕二頭筋長頭腱が断裂すると、筋腹が力こぶ状に膨らむ特徴的な変形(ポパイ変形)を生じます。近年の総説では、長頭腱断裂の多くは保存療法で良好に経過し、短頭が残るため肘の筋力もほぼ保たれ、日常生活への支障は少ないとされています(Elgendy Mら. Cureus. 2025)[1]。また長頭腱断裂は腱板断裂と合併しやすく、腱板断裂が重度で多くの筋腱に及ぶほど、また高齢であるほど合併頻度が高いことが報告されています(Alraddadi Aら. PLoS One. 2024)[2]

エビデンス:若年・整容目的で手術(腱固定術/腱切離術)を考慮する場合

一方、若年で活動性が高い、あるいは力こぶ変形(整容面)が問題となる場合には手術(腱固定術・腱切離術)が検討されます。腱切離術と腱固定術を比較したランダム化比較試験のメタ解析では、機能スコアはほぼ同等でしたが、腱切離術のほうがポパイ変形の発生リスクが有意に高いと報告されています(Ahmed AFら. Shoulder Elbow. 2021)[3]。有症状で活動的な男性の孤立性外傷性長頭腱断裂に対する開放的胸筋下腱固定術では、良好な機能回復(ASESスコアの改善)が得られたとする報告もあります(Waugh CAら. Cureus. 2022)[4]

上腕二頭筋は長頭筋腱ではなく遠位の腱(肘に近い方)で断裂することがあります。これの場合は肘より少し近位を押さえると痛むことがあります。運動や労働での負荷によって生じることが多く、手術を考慮します。
 
遠位上腕二頭筋腱断裂 distal biceps tendon tear

米国の報告では30-60歳の男性にみられ近位の断裂が97%、遠位は3%とされています。日本では珍しい疾患です。バーベルを持ち上げたり強いが威力が働くとポップ音とともに断裂します。断裂すると二頭筋の筋腹がポパイのように膨らみます。

成書では受傷3週間までに手術を行うのがよいとされています。手術をしない場合は肘関節の屈曲力が30%、前腕の回外力が25-50%ほど筋力低下します。

エビデンス:遠位(肘側)上腕二頭筋腱断裂

遠位(肘側)の上腕二頭筋腱断裂は比較的まれで、大規模データベース研究では患者の約95%が男性、平均約46歳と中年男性に好発します(Kelly MPら. Am J Sports Med. 2015)[5]。総説では、遠位断裂は上腕二頭筋腱断裂全体の約3%とされ、瘢痕や退縮が進む前の早期手術(受傷3週間ごろまで)が望ましいとされています(Jaschke Mら. EFORT Open Rev. 2023)[6]。手術と非手術を比較したメタ解析では、手術群のほうが屈曲力(平均差約26%)・回外力(約28%)ともに優れると報告され(Looney AMら. J Shoulder Elbow Surg. 2022)[7]、別のメタ解析でも非手術では特に回外力の低下が顕著(手術約89% vs 保存約63%)と示されています(Cuzzolin Mら. Orthop J Sports Med. 2021)[8]

エビデンス出典(全8件)を見る
  1. Elgendy M, Mersal M, Embaby O, Elsaidy S, Alsonbaty M. Biceps Tendon Rupture: Contemporary Evidence, Evolving Techniques, and a Mechanics-to-Management Clinical Framework. Cureus. 2025;17(11):e97718. PMID: 41458715.
  2. Alraddadi A, Aldebasi B, Alnufaie B, Almuhanna M, Alkhalifah M, Aleidan M, Murad Y, Almuklass AM, Ahmed AA. The association between a rotator cuff tendon tear and a tear of the long head of the biceps tendon: Chart review study. PLoS One. 2024;19(3):e0300265. PMID: 38466684.
  3. Ahmed AF, Toubasi A, Mahmoud S, Ahmed GO, Al Ateeq Al Dosari M, Zikria BA. Long head of biceps tenotomy versus tenodesis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Shoulder Elbow. 2021;13(6):583-591. PMID: 34804206.
  4. Waugh CA, Havenland T, Jain N. Open Subpectoral Tenodesis for Isolated Traumatic Long Head of Biceps Tendon Rupture Provides Excellent Functional Outcomes in Active Male Patients. Cureus. 2022;14(11):e31553. PMID: 36408311.
  5. Kelly MP, Perkinson SG, Ablove RH, Tueting JL. Distal Biceps Tendon Ruptures: An Epidemiological Analysis Using a Large Population Database. Am J Sports Med. 2015;43(8):2012-2017. PMID: 26063401.
  6. Jaschke M, Rekawek K, Sokolowski S, Kolodziej L. Distal biceps tendon rupture: a comprehensive overview. EFORT Open Rev. 2023;8(11):865-873. PMID: 37909692.
  7. Looney AM, Day J, Bodendorfer BM, Wang D, Fryar CM, Murphy JP, Chang ES. Operative vs. nonoperative treatment of distal biceps ruptures: a systematic review and meta-analysis. J Shoulder Elbow Surg. 2022;31(4):e169-e189. PMID: 34999236.
  8. Cuzzolin M, Secco D, Guerra E, Altamura SA, Filardo G, Candrian C. Operative Versus Nonoperative Management for Distal Biceps Brachii Tendon Lesions: A Systematic Review and Meta-analysis. Orthop J Sports Med. 2021;9(10):23259671211037311. PMID: 34734095.

参考:『肩学』