Hip-spine syndrome
股関節と脊椎・骨盤は密接に関連してそれぞれの病態に影響し合います。このような状況を Hip-spine syndromeと言います。
MacNab分類
1.simple type 股関節、脊椎両方に変形を認めるが病態の主因はどちらか一方
2.secondary type 病態が互いに影響し合っている
3.comprex type 両方に変形、両方が影響
股関節疾患に伴う変形性膝関節症(coxitis knee)
なんらかの股関節の障害で可動域の制限、脚長差が生じると隣接する膝関節に関節痛、変形などが生じやすくなります。変形性股関節症(多くは発育性股関節形成不全症)では脚長差が大きくなると患側の膝が外反、健側が内反することがあります。(Windswept
deformity)
変形性股関節症、高位脱臼、強直股関節に合併する変形性膝関節症の場合、治療の原則は股関節→膝関節の順になります。ただ症状の無い股関節疾患の場合、なかなか手術に同意してもらうのが困難です。脚長差がある場合はまずは補高装具を装着し経過をみて症状が改善しないようなら手術を検討します。THRを優先しますが、無理な場合はTKA後、可及的速やかにTKAを行うように考慮します。
治療戦略
原則として、股関節→膝関節の順に治療を行います。
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病態 |
初期対応 |
手術適応 |
|---|---|---|
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股関節に明らかな症状あり |
THA(人工股関節全置換術)を優先 |
THA後に膝症状が残存すればTKAを検討 |
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股関節が無症候性 |
補高装具や理学療法で経過観察 |
TKAを先行する場合もあるが、THAを併施または後施行することを考慮 |
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高位脱臼・強直股関節 |
THAが困難な場合あり |
TKA単独施行後にTHAを追加することも |
補足
THA後に膝OAが改善する例もあり、
膝関節の症状が股関節由来であることがある
ただし、
THA後に膝OAが進行する例もあり、慎重な経過観察が必要
歩行分析や筋力評価を含めた運動連鎖の視点が重要
エビデンス:概念・分類
Hip-spine syndromeは、股関節の疾患と腰椎の変性疾患が併存し、互いの病態に影響し合う状態を指します。OffierskiとMacNabが提唱したsimple・secondary・complexという分類が現在も基礎になっていますが、近年の総説では、両者の症状が重なり合って原因の見きわめが難しいこと、そして股関節・骨盤・腰椎を一連のものとして評価する必要があることが改めて整理されています(Zimmerer ら. Orthopade. 2020)[1]。
エビデンス:診断・治療方針
股関節と腰椎のどちらを先に治療すべきかは重要な論点です。股関節の障害による骨盤の傾きや脚長差が腰椎や下肢にも影響を及ぼすため、症状の主な原因となっている関節(多くは股関節)を優先して治療する考え方が示されています(Pepke ら. Orthopade. 2020)[2]。また、大腿骨の捻れや大腿骨寛骨臼インピンジメントといった股関節側の要因が腰痛の原因となる仕組みも報告されており、股関節・骨盤・体幹をひとつのまとまりとして評価することがすすめられています(Khoury ら. J Hip Preserv Surg. 2020)[3]。
エビデンス出典(全3件)を見る
- Zimmerer A, Hoffmann M, Hofer A, Janz V, Wassilew GI. Hip-spine syndrome-current developments and state of the evidence. Orthopade. 2020;49(10):841-848. PMID: 32857167.
- Pepke W, Innmann MM, Akbar M. Battle: Indication for surgery in hip-spine syndrome-Hip or spine first? The spine surgeon's view. Orthopade. 2020;49(10):905-912. PMID: 32936313.
- Khoury AN, Hatem M, Bowler J, Martin HD. Hip-spine syndrome: rationale for ischiofemoral impingement, femoroacetabular impingement and abnormal femoral torsion leading to low back pain. J Hip Preserv Surg. 2020;7(3):390-400. PMID: 33948195.
参考:『整形・災害外科 2023.7 腰痛診療の深化』 / 『整形外科医のための股関節のスポーツ診療のすべて』 / 『Orthopaedics』2024年12月号 / 『関節外科』2022年7月号