Vesperの呪い~右心不全と腰部脊柱管狭窄症
右心不全があると臥位で脊柱管の内圧が上がり、腰部脊柱管狭窄症の症状が悪化します。就寝後に疼痛のために寝られなくなります。これを「Vesperの呪い」と名付けられています。正式な病名ではないのですが、誰かがこのように命名したようです。医学的には、「右心不全による腰部脊柱管狭窄症の症状悪化」といえます。
心不全の指標である脳性Na利尿ペプチド(BNP)が上昇します。右心不全の治療を行うことにより、症状は改善します。
Vesperの呪い~右心不全と腰部脊柱管狭窄症
数カ所の整形外科を経て当院に来られました。これまでの説明では「何も無い」「分からない」と言われていたそうです。腰部脊柱管狭窄症があり、寝るとすぐに坐骨神経痛様症状が出て困っているとのこと。起きたらどうなりますかと尋ねると、すぐに痛みは消えるそうで・・・これは・・・「Vesperの呪い」じゃないかと思い、心臓は悪くないですかと聞いたところ、心拡大があったり無かったりとのことでした。内科の投薬には利尿剤もでており、慢性心不全を思わせました。座位から仰臥位になってもらうとすぐに痛みが出現しました。ほんの10秒ほどで痛みがでました。試しに背中に毛布をいれて半坐位をとると10秒ほどで痛みは消失し、本人は狐につままれたような顔つきになってました。
おそらく症状が悪化したこの半年間で、右心不全も悪化しているのだと思います。循環器内科で心不全の有無を調べて貰うことにしました。
エビデンス:静脈うっ血による病態機序
神経根症の疼痛は、神経根周囲の微小な静脈のうっ滞による神経内浮腫が主な要因となりうると報告されており、静脈系のうっ血が病態機序として注目されています(臥位で増悪する腰痛・下肢症状の機序と整合)。(Berthelot JM ら. Joint Bone Spine. 2022)[1]。
エビデンス出典(全1件)を見る
- Berthelot JM, Douane F, Ploteau S, Le Goff B, Darrieutort-Laffite C. Venous congestion as a central mechanism of radiculopathies. Joint Bone Spine. 2022;89(2):105291. PMID: 34653602.
参考:『腰部脊柱管狭窄症 診療ガイドライン 2021』 / 『orthopaedics』2019年2月号 / 『脊椎脊髄J2020.2 腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲手術』 / 『速考!脊椎外来診療エッセンス』 / 『脊椎脊髄ジャーナル 2021.12 脊椎脊髄手術の再手術症例における手術の骨と留意点』