要約
肋軟骨炎・胸肋部痛(Costochondritis/Costosternal pain syndrome)は、胸骨と肋軟骨の接合部を中心に、痛みや圧痛を生じる比較的よくみられる胸壁痛です。明確な組織炎症が常に証明されるわけではなく、一般には、腫れを伴わない胸肋部の限局性疼痛を表す臨床診断として扱われます。
押して痛みが再現されることや、深呼吸・咳・腕の動きで痛みが変化することは胸壁由来を示唆しますが、それだけで心臓や肺の病気を完全には否定できません。
1. 主な症状・所見
- 第2〜5肋軟骨付近を中心とする胸骨傍の痛みや圧痛
- 深呼吸、咳、くしゃみ、寝返り、体幹のひねりなどで増悪
- 腕の挙上や水平内転で痛みが誘発されることがある
- 圧迫によって普段と同じ痛みが再現される
- 複数の胸肋部に圧痛を認めることがある
- 通常は明らかな発赤、熱感、腫脹を伴わない
2. 検査
典型例では問診と身体診察を中心に診断します。レントゲン、心電図、血液検査、CT、MRIなどは、症状や危険因子に応じて、心肺疾患、骨折、感染、炎症性疾患、腫瘍などを除外するために行います。
3. 治療
- 痛みを誘発する運動や作業の一時的な調整
- アセトアミノフェン、外用NSAIDs、内服NSAIDsなどによる疼痛管理
- 胸郭、胸椎、肩甲帯の可動性訓練やストレッチ
- 姿勢や作業環境の見直し
症状が遷延・増悪する場合は、感染、疲労骨折、SAPHO症候群、腫瘍などが隠れていないか再評価します。
エビデンス:肋軟骨炎の診断と治療
肋軟骨炎は非外傷性胸壁痛の代表的な原因であり、典型的には問診と身体診察による臨床診断で、画像検査は他疾患の除外目的で選択的に行うことが推奨されています(Mott T ら. Am Fam Physician. 2021)[1]。
4. Tietze症候群との違い
Tietze症候群も上位の肋軟骨接合部に痛みを生じますが、痛む部位に明らかな腫脹を伴う点が肋軟骨炎との最も重要な違いです。肋軟骨炎では通常、目で見たり触れたりできる腫脹は伴いません。
5. 早めの受診が必要な症状
次の症状がある場合は、一般的な肋軟骨炎と自分で判断せず、早めの受診が必要です。
- 安静時痛や夜間痛が次第に悪化する
- 発熱を伴う発赤、腫脹、熱感
- 大きな外傷後に生じた胸痛
- 原因不明の体重減少を伴う痛み
6. まとめ
肋軟骨炎・胸肋部痛は、活動調整や鎮痛薬などの保存的治療で改善が期待できることが多い病態です。一方で、症状が長引く場合や非典型的な経過をたどる場合は、感染、疲労骨折、SAPHO症候群、腫瘍などとの鑑別が必要になることがあります。
エビデンス出典(全1件)を見る
- Mott T, Jones G, Roman K. Costochondritis: Rapid Evidence Review. Am Fam Physician. 2021;104(1):73-78. PMID: 34264599.