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整形外科 外科
リハビリテーション科

鎖骨骨折 fracture of the clavicle

 転倒時、手をついたり肩を打ったりすると鎖骨骨折が起こることがあります。鎖骨を3等分して骨折部位により外1/3、中1/3、内1/3に分けます。外側の1/3、中央部の1/3、内側の1/3という意味です。ほとんどが中1/3で起こりますが一部は外1/3で起こります。内1/3はまれです。

 通常、中1/3での骨折は鎖骨バンドを装着して治療します。外1/3は三角巾固定とします。おおむね骨折端が50%以上ずれている場合は手術を考慮します。内1/3はずれが大きい場合は固定手術を行います。

 手術は出来るだけせずに保存的に治す施設と積極的に手術を行う施設とに分かれています。主骨片間に接触がない場合や、2cm以上の短縮がある場合は手術適応とされていますが、このような転位があっても多くの骨折が問題なく治っています。骨幹部骨折の真の手術適応は不明とする意見もあります。

 大人の場合、治療期間は2-3ヶ月かかります。スポーツ復帰は4ヶ月ほど必要です。かなり骨片が転位している場合はそれ以上の期間が必要です。

 子供の場合は大人と同様転倒などで起こります。ほとんどが中1/3で骨折します。鎖骨バンド等でずれを矯正して固定します。乳幼児で2-3週間、小中学生は4-6週間かかります。

 鎖骨骨折の合併症として血管や神経の損傷が起こることがあります。手がしびれたり血流が悪くなるようでしたらただちに対応する必要があります。
  
鎖骨骨折

 鎖骨骨折には、骨幹部骨折と外側骨折があります。内側骨折もありますがまれです。

 鎖骨骨折の保存治療では偽関節が発生することはまれではありません。一説によると15%で起こるという報告があります。ただし鎖骨骨折では症状の無い偽関節もまれでなく、痛みの原因として肩関節拘縮を合併しており、拘縮を運動療法で改善させると痛みが無くなることがよくあります。偽関節発症の要素として側方転位が重要で、骨幅150%以上の転位は偽関節リスクが高く手術を勧めるとしています。

<鎖骨骨幹部骨折>

 側方転位が150%を超えるものは偽関節リスクが高いと考えて手術を勧めます。保存治療は、かつては「胸を張って鎖骨バンドで整復位を保つ」ようにしましたが、現在では、転位した鎖骨骨片に対して整復位を外固定で保つのは困難であるとされています。また鎖骨バンドと三角巾の治療効果には差がありません。

 従って、手が使いやすいように利き手側の鎖骨骨折は鎖骨バンドで、反対側は三角巾を使うとする意見もあります。保存治療では、シャワー浴は受傷直後より可能で、急性期を過ぎれば、入浴も許可します。外固定の有無で痛みの差が無くなれば、外すようにします。リハビリは疼痛が生じない範囲内で動かすようにします。
 

 受傷後、12週を経てもレントゲンで骨癒合が確認できなくとも、患肢の使用は制限しません。例え偽関節になっても、可動域制限が無く、痛み無く患肢を使用できればよいという考え方に基づいています。遷延治癒例では、愁訴が無ければ半年後または1年後に再撮影を行います。十分期間をかけると骨癒合を得られている場合があるとしています。


<鎖骨遠位端骨折>

鎖骨遠位端骨折(Neer分類)

Type1:烏口鎖骨靭帯が無傷で転位なし。→保存治療
Type2:烏口鎖骨靭帯(円錐靭帯)が内側の骨片より剥がれたもの。→近位骨片上方転位→転位が強ければ手術を考慮
Type3:肩鎖関節で骨折したもの。→肩鎖関節内骨折→保存治療

 Neer分類TypeIIは遠位が重力にて下方に引かれるので、近位端は上方に跳ね上がります。保存治療では高率に偽関節を形成しますが、普通の生活には支障が無いことが多いとされています。「以前はTypeIIの遠位骨折は全例手術が行われていましたが、偽関節となっても機能がよいので、手術適応は若くて活動性の高い人に限られる」となっています。

 小林誠によると、原則保存的治療を行い、固定は三角巾のみとしています。また患者への説明として
・手術をしないと高率に偽関節となるが、偽関節であっても機能的には問題が無い
・ただし、外観上、触診上の変形・左右差は残る
・受傷後3週間程度で痛みは自制内となり、左右差のほとんどない挙上が可能となる
・変形が残るのが嫌なら手術をしなければいけないが、変形が残ってもよいなら手術をしない治療を勧めるとしている。


 本日のコラム83 鎖骨遠位端骨折

 小さな骨折はなかなか分かりにくいものです。診察に加えて、超音波検査とレントゲンを組み合わせると明らかになることもよくあります。やはり超音波検査(エコー)を如何に駆使できるかが診断能力の分かれ目のように感じます。
 

レントゲンでは、左鎖骨遠位端に変形と骨折線がわずかに見えます。


超音波でみると骨折部のずれが描出されます。肩鎖関節の脱臼を伺わせる像も認めます。