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整形外科 外科
リハビリテーション科

神経痛性筋萎縮症 neuralgic amyotrophy

 神経痛性筋萎縮症は一側上肢の神経痛で発症し、疼痛の軽快後に限局性筋萎縮が生じる疾患。腕神経叢とその近傍を首座とする特発性末梢神経症で、感染、外傷、労作、遺伝的素因など複数の誘因があるとされている。

 肩甲・上腕部の筋萎縮を呈する典型例ではSTIR−MRIにて腕神経叢上部に異常信号が描出される場合がある。臨床亜型として、遠位筋優位型、前骨間・後骨間神経麻痺、腰仙神経叢障害などがある。

 治療法は確立されていない。運動機能の予後は必ずしも良好ではない。

 罹患肢の感覚障害を認めることが多いが、程度は軽い。

 治療は、発症早期(4週間以内)にステロイドの投与が効果があるとされている。免疫グロブリン大量静注療法で良好な結果を得たとの報告があるが、有効性は確立されていない。
 手術療法(神経線維束間剥離術、神経移植、神経移行術)があるが、手術への反対意見も根強い。
 
 疼痛の程度は、VASで7/10以上とされ、救急病院に駆け込む程度とされる。麻痺の程度はさまざまで、完全麻痺に症例も多く、予後は必ずしも良好ではない。

 典型例では、一側上肢に限局し、数日から数週間(大部分が2週間以内)続く、強い疼痛により始まる単相性発作をを呈し、肩甲及び上腕に筋萎縮を認め、上部から中部腕神経叢の障害と推定される。下部腕神経叢障害が示唆される遠位型神経痛性筋萎縮症や、腕神経叢以外の神経障害(腰仙神経叢、横隔神経、脳神経)の合併、長胸神経、前・後骨間神経麻痺等の(多発)単神経障害の性格が強い症例などがある。

 ■suggestive symptoms and exclusion criteria for considering a diagnosis of neuralgic amyotrophy (NA)

neuralgic amyotrophyis probable or definite
・新規に発症した片側もしくは両側肩の疼痛 NRSで7〜10/10
・肩関節・肩甲骨の運動の異常
・3週間以内に長胸神経、肩甲上神経、前骨間神経の麻痺が顕在化する

optional signs & symptoms
・疼痛がそれほど強くないが典型的な麻痺の分布を示すもの
・麻痺の範囲が典型例より広いもの
・非対称性に反対側にも麻痺が存在するもの
・感覚低下やしびれが上肢に存在するもの
・他の末梢神経を含むもの:腰仙骨神経叢、横隔神経、反回神経

NAから除外されるもの
・3ヶ月以上にわたり疼痛や、筋力低下が進行するもの(肩の運動異常に伴う痛みを除外する)
・他動可動域制限のみのもの
・Horner 徴候
・完全な対称性麻痺
・糖尿病

 参考文献:原友紀 神経痛性筋萎縮症に伴う痛みと麻痺 関節外科vol.41 No.5(2022)