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整形外科 外科
リハビリテーション科

梨状筋症候群 piriformis muscle syndrome

 坐骨神経を圧迫することによって坐骨神経痛が生じます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と比較してまれな疾患です。

 梨状筋症候群とは臀部にある梨状筋という筋肉が坐骨神経を締め付けることによって起こります。症状は坐骨神経痛が起こります。ただし腰痛は原則としてありません。スポーツ障害でよく起こります。治療は梨状筋をストレッチして神経の締め付けを和らげます。改善しない場合は、梨状筋を切離する手術を行うことがあります。 

  臀部から下肢にかけて坐骨神経様の痛みが出る場合、腰から神経障害が生じているのか、より末梢の神経障害かを見極める必要があります。坐骨神経痛を訴える患者の6%に梨状筋症候群がみられます。梨状筋症候群は基本的には腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症を除外診断します。梨状筋症候群の診断が難しいのはしっかりとした除外診断を行う必要があることと、そもそもこの病気を念頭に置いておかないと見逃してしまうことです。

 股関節を他動的に内旋させるテスト(Treiberg徴候)、座位で股関節を抵抗下に外転させるPace徴候、患肢を上にした側臥位で下肢を外転するBeatty徴候などの徒手検査も有効です。検査は腰椎〜骨盤部のレントゲンに加えて必要に応じてMRIを行います。腰椎にヘルニアや狭窄症が無く上述の徒手検査が陽性であれば梨状筋症候群に確度は高くなります。逆にMRIで所見があれば、それと合致する症状が出ているかで判断します。

  <梨状筋症候群>
 梨状筋症候群は、殿部にある梨状筋によって坐骨神経が絞扼されて起こる坐骨神経痛のことです。坐骨神経痛の多くは腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど腰部の疾患で神経根を圧迫して起こります。腰から出た神経はやがて集まって殿部では坐骨神経を形成します。梨状筋症候群はこの部で筋による絞扼を起こして発症します。

 原因としては、誘因不明なもの、軽微な外傷によるもの、スポーツによる酷使などがあります。梨状筋症候群はその定義から、腰部の疾患は無いはずですが、高齢化とともに腰椎の変形・変性が生じていることがあり、現状の症状が神経学的に誘因として一致するかが重要となります。

 診断は、自覚症状、他覚所見、理学所見、画像検査により判断されます。梨状筋症候群の4割は腰痛があったという報告もあります。 
 誘発テストは、股関節後方のやや内側の圧痛(9割以上)、腹臥位で膝90度屈曲し股関節を内旋し痛みを誘発させるテスト(6-7割陽性)。その他、アキレス腱反射の低下もしくは消失が5割、SLR陽性率64%という報告があります。

 他の坐骨神経痛を起こす疾患との鑑別は、かなり難しく、画像診断で梨状筋症候群の所見は何も無い訳で、腰部のMRI等で腰に画像所見が無いことが傍証になり得ます。

 腰の画像所見に異常が無く、なおかつ坐骨神経痛を起こすケースは分かりやすいですが、中高年になって腰の変形や椎間板の変性がある場合は、鑑別が困難となります。極論を言えば、腰に所見があって神経学的に一致しても必ずしも症状が出ているとは限らない。場合によっては両者の症状のこともあり得ます。

 成書には、診断として坐骨神経ブロックを行って症状が改善するかどうかが重要とあります。

 したがって症状として腰痛がなく殿部から下肢に放散する痛みがあり、かつ腰部にMRIで画像上椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの異常所見が無く、股関節の屈曲内旋などで坐骨神経痛が誘発される場合は梨状筋症候群の可能性が高くなると言えます。


 梨状筋症候群ではないかと来られる患者さんのうち、それ以外の疾患(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症)であることが多いのも事実です。