池田医院
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整形外科 外科 リハビリテーション

骨折は「痛くて腫れて歩けない」とは限らない

骨折でも痛みや腫れが少なく動かせたり歩行できることがよくあります。その逆に骨折が無くとも動かせず歩けないこともあります。従って腫れや痛み、動作だけで判断するのは極めて難しいと言えます。もちろん動けないほど痛ければ病院へ救急搬送しましょう。

骨折があっても歩けてしまうことがある(股関節・骨盤)

転倒して股関節や骨盤の骨折をしても、普通に歩いて来られることがあります。レントゲンで骨折が写らない「隠れた骨折(オカルト骨折)」は、高齢者の股関節痛では珍しくありません。

オカルト骨折、どのくらいの頻度で起こるのか

股関節のレントゲンは骨折の検出において感度90〜98%とされていますが、裏を返せば残りの数%は写らないということでもあります。実際に、転倒後の股関節痛でレントゲンが正常だった患者のうち、約4%で後にMRIやCTなどの精密検査で骨折が判明したとする報告があります(Yun BJ, et al. Acad Emerg Med. 2016)。さらに、レントゲンでは異常が見当たらない、あるいは判定が難しいものの臨床的に骨折が強く疑われる高齢者を対象にした複数の研究をまとめたメタ解析では、10人中4〜9人の割合で、実際には手術を要する骨折が存在していたと報告されています(Haj-Mirzaian A, et al. Radiology. 2020;296(3):521-531)。このため、レントゲンで異常がなくても強い痛みで体重をかけられない状態が続く場合は、MRIなどの追加検査が推奨されています。

レントゲンで「異常なし」でも、骨折を否定しきれないことがある

折れてないことを証明するのはなかなか困難で、臨床所見と画像診断で「現時点では明らかな骨折は見当たらない」というのが限界です。骨折があれば画像診断で比較的明瞭につけることが出来ますが、裂離骨折や急性塑型性変形など分かりにくいものもあり、レントゲン撮影に加えて超音波断層、MRI、CTなどの補助検査を追加することがあります。

手首の骨折(舟状骨骨折)を例に

手首の舟状骨という骨の骨折は、通常のレントゲン撮影だけでは見逃されることが珍しくありません。かつては、疑わしくても初回レントゲンが正常なら、いったん固定して10〜14日後に再度レントゲンを撮り、骨折線や修復反応(骨硬化像)が現れるかどうかで判断する、という方法が広く行われていました。しかし、この「2週間待って再撮影」という方法は診断確定までに時間がかかり、結果的に骨折がなかった患者まで長期間不必要に固定してしまうことが問題視されており、現在ではCTやMRIといった断面画像を使う方が、レントゲンの再撮影による経過観察より早く正確に診断でき、不要な固定期間も短縮できることが報告されています(Wijetunga AR, et al. J Med Radiat Sci. 2019;66(1):30-37)。臨床的な疑いが強い場合は、初回レントゲンが正常でもその場でMRI(あるいはCT)に進む方針が、現在では標準的な考え方になっています。これも「今は分からないので、いったん骨折として扱いながら確かめる」という基本姿勢は変わらないものの、確認の手段がレントゲンの再撮影からMRI・CTへと進化した例といえます。

また初回診察では明らかにならなかった骨折が後日、経過と共にずれが生じて分かることもあります。経験的には骨折の可能性が否定できなければ骨折に準じた治療を行っておき、経時的に痛みが取れて骨折が無いことが分かれば、本来の外傷に準じた治療に戻します。

骨折の見逃しは、実際どのくらい起きているのか

オランダの救急外来を対象にした約2万6千件の骨折を対象にした後ろ向き研究では、全体の1.1%が初診時に見逃されていたと報告されています。見逃されやすい部位は年代によって傾向があり、子供では肘・手首、成人では足部、高齢者では骨盤・股関節に多かったとされています(Mattijssen-Horstink L, et al. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2020;28:38)。この研究は、骨折の診断が経験豊富な医師にとっても本質的に難しい判断であり、初診で分からなければ経過を見て確認する、という姿勢が診療上重要であることを裏づけています。

参考文献一覧を見る(全4件)
  1. Yun BJ, Brennan IE, Daly JL, et al. Diagnostic Imaging Strategies for Occult Hip Fractures: A Decision and Cost-Effectiveness Analysis. Acad Emerg Med. 2016;23(10):1161-1169.
  2. Haj-Mirzaian A, Eng J, Khorasani R, Raja AS, Levin AS, Smith SE, Johnson PT, Demehri S. Use of Advanced Imaging for Radiographically Occult Hip Fracture in Elderly Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis. Radiology. 2020;296(3):521-531.
  3. Wijetunga AR, Tsang VH, Giuffre B. The utility of cross-sectional imaging in the management of suspected scaphoid fractures. J Med Radiat Sci. 2019;66(1):30-37.
  4. Mattijssen-Horstink L, Langeraar JJ, Mauritz GJ, van der Stappen W, Baggelaar M, Tan ECTH. Radiologic discrepancies in diagnosis of fractures in a Dutch teaching emergency department: a retrospective analysis. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2020;28:38.