1990年代の研究、そして現在までの追試
骨盤の左右の骨(腸骨)と仙骨をつなぐ仙腸関節は、そもそも動く範囲が非常に小さい関節です。健常な成人を対象に、骨に直接ピンを刺して立体的に動きを計測した研究では、仙腸関節の動きは平均で回旋2°、並進2mm程度しかないことが示されています(Jacob HA, Kissling RO. Clin Biomech. 1995;10(7):352-361)。この程度のわずかな動きを、手技によって「ゆがみを矯正する」ように意図的に変化させることは考えにくいというのが、以後の研究の一貫した結論です。
実際に、仙腸関節の位置にピンを埋め込んだ患者を対象に、矯正手技(マニピュレーション)の前後でレントゲンを使って骨の位置を精密に比較した研究では、手技によって臨床的な徒手検査の結果は変化した(陽性から陰性になった)にもかかわらず、仙腸関節そのものの位置は変化していなかったことが示されました(Tullberg T, et al. Spine. 1998;23(10):1124-1128)。この結果は、後年の三次元動作解析を用いた研究でも再現されており、矯正手技によって仙腸関節の位置が変わるという主張は、現在に至るまで裏付けられていません。矯正手技を受けた後に症状が良くなったと感じる方がいるのは事実ですが、それは骨の位置が矯正されたためではなく、周囲の筋肉の緊張やその他の神経学的な反応による可能性が指摘されています。
骨盤のゆがみを治しますというのは怪しい話と思ってください。
骨盤周辺の痛みは、関節や筋・腱に問題があるケースが殆どで、スポーツ障害では外傷やオーバーユースが痛みの原因となっています。身体が硬い人は障害が出やすいので、日頃のストレッチが大切です。
高齢者では、小さな外力で生じる骨盤骨折(脆弱性骨折)により痛みが生じていることもあります。また安静時痛がある場合は、内臓痛のこともありますので注意が必要です。