股関節の病気が膝の痛みとして現れる理由
その理由として股関節前面の神経支配は大腿前面の神経と共通しており、股関節痛であるはずの痛みが膝の痛みとして訴えます。
股関節の代表的な病気と、膝への関連痛
股関節と膝の前面(内側)は、いずれも閉鎖神経(obturator nerve)の枝が分布しており、股関節に痛みの原因があっても、脳はその刺激を膝の痛みとして認識してしまうことがあります。この現象は「関連痛(referred pain)」と呼ばれ、小児の股関節疾患ではよく知られた特徴です。
代表的な疾患として、大腿骨頭がなだらかに壊死していく「ペルテス病」(4〜10歳頃に多い)や、成長期に大腿骨の骨端線がずれる「大腿骨頭すべり症」(10代の思春期に多い)が挙げられ、いずれも股関節・鼠径部の痛みだけでなく、大腿部や膝の痛みとして症状が出ることが繰り返し報告されています(StatPearls: Slipped Capital Femoral Epiphysis, 2023年更新;StatPearls: Legg-Calve-Perthes Disease, 2026年更新)。成人の股関節痛に関するレビューでも、股関節の痛みは鼠径部が最多ですが、閉鎖神経を介して膝まで関連痛が生じることが指摘されています(Luthra JS, et al. Hip Pelvis. 2019;31(3):129-135)。このため、子供が「膝が痛い」と訴えたときも、診察では膝だけでなく股関節の可動域や圧痛を必ず確認することが、小児整形外科の教科書的な基本とされています。
ちなみに、上肢でも同じことで肘の痛みを訴える子供が実は鎖骨骨折であったことも。
従って、小さい子供さんを診るときは、よほどこれは関係ないだろうというところから、丹念に診察する必要があります。