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整形外科 外科
リハビリテーション科

脊椎由来の痛み・しびれ

頚部痛・肩こり

「肩こり」定義:頸より肩甲部にかけての筋緊張、重圧感、および鈍痛

椎間板 変性や外傷で、神経終末が椎間板内部に侵入
椎間関節
神経根 環軸椎不安定症などでC2神経根障害は大後頭神経刺激症状→後頭部痛
頚椎外傷 高エネルギー損傷以外でも高齢者は自己転倒などで頭部をうち軸椎骨折が高頻度に起こる。強直脊椎では小さな外力で骨折。
頚部筋群 胸椎後弯増大、腰椎前弯の現象で、前方注視には頚椎の挙上が更に必要となり頚部痛生じる
肩甲帯 懸垂関節故に僧帽筋・肩甲挙筋への緊張
肩関節障害 可動域の低下→肩甲部のより大きな運動→周囲筋の負荷増大

鑑別診断
 頸椎症 理学所見に神経根や脊髄障害の症状が無く画像で椎間板や椎間関節の変性以外認めない
 頚椎症性神経根症 発症初期は頚部痛や肩こり単独であることが多い。進行しても頚部痛のみのこともある
 頚髄症 頚部痛を合併し、主訴が頚部痛のみのことがある(主症状は手巧緻障害、深部腱反射亢進、歩行障害)
 頚椎椎間板ヘルニア 頚部痛、肩甲部痛のみのことあり
 頚椎後縦靭帯骨化症 頸部可動域制限が生じることによって頚部痛や肩こり
 感染性脊椎炎 易感染性宿主では常に考慮。化膿性脊椎炎(血液の炎症反応増加)、結核性脊椎炎(血液での炎症反応が弱い。クオンティフェロン検査、ツベルクリン反応、喀痰培養検査)
 転移性脊椎腫瘍 肺癌(胸部X線、胸部CT)、乳癌(CEA Ca15-3)、前立腺癌(PSA)胃癌(既往、CEA Ca19-9)、甲状腺がん、腎細胞癌(腹部CT)、多発性骨髄腫(免疫電気泳動)、悪性リンパ腫(sIL2-R)
 原発性脊椎腫瘍 硬膜内髄内腫瘍が多い(神経鞘腫、髄膜腫)
 関節リウマチ 環軸椎前方亜脱臼、環軸椎垂直脱臼→環軸椎不安定症・環軸関節の骨破壊→頚部痛・肩こり
 体軸性脊椎関節炎 45歳以下で発症、3ヶ月以上の脊椎の痛み、HLA-B27陽性と2つ以上の脊椎関節炎 原因疾患は強直性脊椎炎(AS)、乾癬性脊椎炎
 リウマチ性多発筋痛症 血液検査で炎症所見。赤沈の亢進、CRP増加、RF陰性。朝のこわばり。側頭動脈炎
 頚椎骨折
 破壊性脊椎関節症(透析脊椎症)
 筋筋膜性頚部痛・本態性肩こり
 肩疾患 肩関節周囲炎、腱板断裂、Loose shoulder、変形性肩関節症、胸郭出口症候群
 その他 眼精疲労、うつ病、心血管系障害(冠動脈障害など)、顎関節症

背部痛

 1.緊急性を要する背部痛
 心・大動脈系異常→大動脈解離、大動脈瘤破裂、心筋梗塞。緊張性気胸。

 硬膜外血腫の急性発症 突然発症の背部痛に伴って急速に進行する下肢麻痺、膀胱直腸障害。抗凝固剤服用。子供でも起こる。除圧術+血圧・凝固系の管理 鑑別診断;血液系疾患(悪性リンパ腫など)MRI軸位でダンベル腫瘍様所見

 *ダンベル型腫瘍;神経鞘腫7割、神経線維腫1割、神経芽腫・神経節神経腫1割、髄膜腫5%、血管腫2% その他(血管脂肪腫、傍神経節腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性リンパ腫、黒色腫、横紋筋肉腫、孤立性線維性腫瘍(SFT)、メラニン細胞腫)

 2.見逃してはならない注意すべき背部痛

 1)転移性脊椎腫瘍 亜急性(〜慢性)発症 red flagsのなかでも55歳以上、癌の既往、予期せぬ体重減少が重要。背部痛を主訴とした30−40歳代でred flagsなしで癌の脊椎転移のこともあるので注意が必要。                 2)炎症性疾患(化膿性脊椎炎・リン酸カルシウム結晶沈着症)
  化膿性脊椎炎;初診時に発熱が無いことが多い。MRIが有効。血液培養必須。
  リン酸カルシウム結晶沈着症 Crown Dense syndromeが有名。ほか関節や靱帯、椎間板、椎間関節などに石灰化をきたし炎症を起こす。
 3)硬膜動静脈瘻 誤診率の高い疾患 腰部脊柱管狭窄症と症状が似ている。60歳代の男性に多い(男女比2:1) MRI脊髄円錐部のT2高輝度、Frow void

 3.青壮年期の背部痛(主に30−50歳代)
 1)胸椎椎間板ヘルニア 背部の軸性疼痛や放散痛、脊髄症状(歩行障害、膀胱直腸障害)

 4.脊柱変形による背部痛
 1)子供の側弯症(主に思春期特発性側弯症)
 思春期特発性側弯症は、かつて痛みが伴わないものと考えられてきたが、近年は腰背部痛の原因疾患の一つとして考えられている。痛みは上位胸椎領域・右肩甲帯周囲にみられることが多い(humpと関連?)

 2)成人脊柱変形 腰曲がり→脊椎後側弯。胃食道逆流症を起こしやすい。  

 5.その他の珍しい背部痛
 1)成人期の脊椎係留症候群 出生時から小児期にみられるが成人になって見つかることもある。臀部下肢に放散する背部痛。下肢の機能障害(筋力低下、しびれ、筋萎縮)。膀胱直腸障害。自験例では20歳代で前屈すると背部痛がありMRIで見つかった。MRIで脊髄円錐部がL2より低位に位置する。脊髄終糸の肥厚、硬膜内の脂肪腫。