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整形外科 外科
リハビリテーション科

上腕骨骨幹端骨折 humeral diaphyseal fracture

転落や腕相撲、投球動作で起こります。転落の場合は横骨折が、腕相撲や、投球動作ではらせん骨折となります。

上腕骨の骨幹部は橈骨神経が回り込むように接して走行していますので橈骨神経麻痺を合併することがあります。特に上腕骨遠位1/3では橈骨神経が骨折部に挟み込まれる可能性があります。

橈骨神経が麻痺すると下垂手といって手関節が背屈しにくくなり手指の伸展が不良となります。手のひらも上に向かなくなります(完全断裂ですといずれも動きません。)

橈骨神経損傷は自然回復することも多いので経過観察します。必ず神経伝導速度測定などを行い神経損傷の程度を判断します。

骨折治療 原則保存療法

乳幼児:不全骨折 ストッキネットでヴェルポー固定
      完全骨折でずれ+ 吊り下げギプス法

大人 ギブス固定2-3週間→ファンクショナルブレースに変更

■保存療法との比較(FISH試験より)

保存療法(ファンクショナルブレース)で多くの症例で良好な経過をたどるが、約25〜30%で骨癒合不全が起こり、二次手術が必要になることもあります

手術療法は早期機能回復や社会復帰の利点があるが、創部感染や橈骨神経麻痺などのリスクもあります
■自然回復が期待できる橈骨神経麻痺の特徴神経損傷のタイプ(Seddon分類)

分類

損傷の程度

自然回復の可能性

神経伝導障害(neuropraxia)

軽度の圧迫・牽引

高い(数週間〜数ヶ月)

軸索損傷(axonotmesis)

軸索断裂、神経鞘は保たれる

中等度(数ヶ月〜半年)

神経断裂(neurotmesis)

完全断裂

自然回復困難、手術適応

経過観察期間の目安

初期麻痺で感覚・運動が完全に消失していても、多くは3〜6ヶ月以内に回復兆候が見られる

3ヶ月以内にEMG(筋電図)で再神経支配の兆候があれば、自然回復の可能性が高い。

6ヶ月を超えても改善がない場合は、手術(神経剥離、神経縫合、移植など)を検討。

画像所見と骨折のタイプ

骨片による神経の明らかな圧迫や巻き込みがない場合 → 自然回復の可能性あり。

開放骨折や粉砕骨折で神経損傷が疑われる場合 → 早期手術の検討。

MRIや超音波で神経の連続性が保たれている → 保存的治療が基本。

補助検査

筋電図(EMG)・神経伝導検査(NCS):神経損傷の程度と再生の兆候を評価。

超音波検査:神経の走行や圧迫の有無をリアルタイムで確認可能。

線引きの実際(まとめ)

評価項目

自然回復が期待できる場合

手術を検討する場合

神経損傷タイプ

neuropraxia / 軽度のaxonotmesis

neurotmesis / 重度のaxonotmesis

骨折所見

閉鎖性・非粉砕・神経巻き込みなし

開放性・粉砕・神経巻き込みあり

経過

3ヶ月以内に回復兆候あり

6ヶ月以上改善なし

検査所見

EMGで再支配あり / 神経連続性あり

EMGで再支配なし / 神経断裂