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整形外科 外科
リハビリテーション科

中足骨疲労骨折 metatarsal stress fracture

ランニング障害で起こることが多いです。小学生以降なら起こりえます。駅伝の練習、中長距離の走行、テニスやバスケット、サッカーなどでも起こります。

単純に運動負荷が多い、足のアーチが崩れている、靴が合っていない、走行する場所が硬い、体の柔軟性が失われているなどが原因となります。

それぞれ原因を特定して改善しないと再発します。

基本的には保存的治療で局所の安静を保ちます。原因となったスポーツや運動は控えます。経過を見て圧痛が無いこと、レントゲンで化骨がしっかりできること、ホップテストなどのストレステストで問題ないことが運動再開の目安になります。この期間はおよそ6週間かかります。

第5中足骨のJones骨折は別物と考えて治療に当たる必要があります。

保存療法の選択肢と適応

実際の運用では、疼痛と骨折の程度によって治療法を決めています

治療法

適応

特徴

ギプス固定(短期間)

強い疼痛・骨折線明瞭・Grade 3〜4(MRI)

初期2週間の免荷+部分荷重へ移行

足底板+免荷歩行

軽度疼痛・Grade 1〜2・骨折線不明瞭

踵部歩行や足底板で外側荷重を回避

テーピング誘導療法

転位なし・疼痛軽度・早期荷重希望

足圧誘導により骨癒合を促進

シーネ固定+部分荷重

日常生活制限少・疼痛中等度

着脱可能で拘縮予防に有利


第5中足骨基部疲労骨折(Jones骨折)では、偽関節リスクが高いためギプス固定が推奨されることもある

一方で、転位がない疲労骨折では足底板やテーピングによる保存療法が有効とされ、早期荷重・可動域維持・跛行予防の観点から支持されています。

骨癒合促進には超音波治療(LIPUS)やTENSの併用も有効とされ、ギプス固定中でも患部外トレーニングが推奨されています。 LIPUSは骨皮質肥厚型の疲労骨折には効果が弱いとされています。

最初からすぐに元の競技に復帰できるわけではありません。まずは何事も基本から。軽めのジョギングから開始します。
 
Jones骨折(ジョーンズ骨折):第5中足骨近位骨幹部の疲労骨折

Jones骨折は、第5中足骨の近位骨幹部に発生する疲労骨折で、特にサッカー・バスケットボール・ラグビーなどステップやピボット動作が多い競技者に頻発します。Zone分類に基づき、Zone II〜IIIの骨折がJones骨折に該当します。

Zone 部位 特徴
Zone I 第5中足骨基部 短腓骨筋付着部。剥離骨折(下駄骨折)に多い
Zone II 第3腓骨筋付着部 Jones骨折の典型部位。血流が乏しく偽関節リスク高
Zone III 骨幹部近位 疲労骨折が多く、再発率が高い

Zone II〜IIIは骨癒合が得られにくく、再骨折や偽関節のリスクが高いため、難治性骨折として知られています。

危険因子と発症メカニズム

外側荷重傾向(回外足・O脚)
股関節内旋制限・体幹不安定
硬いグラウンド・人工芝・スパイクの設計
ビタミンD不足・RED-S(女性アスリートトライアド)

足関節底屈+前足部内向き荷重が繰り返されることで、第5中足骨近位部に歪み応力が集中し骨折に至ります。

診断と画像評価

X線:骨皮質肥厚(Beak sign)、骨折線
MRI(Nattiv分類):骨髄浮腫・骨膜反応のグレード評価
エコー:ハンプサイン(ラクダのこぶ)で骨肥厚型を確認

Nattiv分類(MRI所見による疲労骨折の進行度)

Grade

所見

特徴

治療方針

Grade 1

骨髄浮腫のみ

骨折線なし・早期病変

保存療法(免荷+足底板)

Grade 2

骨膜反応+骨髄浮腫

骨折線不明瞭

保存療法+荷重誘導

Grade 3

骨折線明瞭+骨膜反応

骨皮質の不整あり

保存療法(免荷長期)または手術検討

Grade 4

骨折線明瞭+骨硬化+骨膜反応

骨肥厚型・偽関節リスク高

手術療法(髄内スクリュー固定など)

治療戦略

保存療法(Grade 1〜2)

免荷+足底板+荷重誘導リハビリ
LIPUS(低出力超音波):骨癒合促進。ただし骨肥厚型には効果が限定的との報告あり

手術療法(Grade 3〜4、Zone II〜III)

髄内スクリュー固定術:ハーバートスクリューなど
PRP併用・TENEX法:再生医療との融合が進む
術後2〜3ヶ月で競技復帰可能(症例による)

リハビリと再発予防

股関節・体幹の安定性強化
足部アーチの保持と外側荷重の是正
EMG・歩行解析による荷重誘導設計
栄養評価(25-OHD)と骨代謝マーカーの活用


注:ハイアスリートでは「骨癒合の確実性」よりも「復帰までの時間と再発予防」が治療選択の軸となります。保存療法が可能な症例でも、競技スケジュールや契約条件によって手術が選ばれることは珍しくありません