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整形外科 外科
リハビリテーション科

  
 頸部痛をきたす他科疾患

 整形外科疾患以外の多くの疾患で頸部痛をきたします。頸部〜頭部疾患のみならず、胸部、腹部、婦人科(更年期障害)、精神科、歯科、眼科などあらゆる科の疾患が原因となります。

1.突発性で生命の危機を及ぼす頸部痛
 ・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞):頚椎症性神経根症との鑑別。頸部の動きでは増強されず、左頸部から肩・上肢・前胸部に放散する痛みは虚血性心疾患を考える。右肩〜右上肢にに放散する虚血性心疾患もあるので注意。


2.突発性で神経学的症状をきたし、後遺障害を残しかねない頸部痛
 ・椎骨動脈解離:後頭部〜後頚部にかけ急性、片側性、中等度以上の疼痛の継続あるいは憎悪。自然軽快することも多いが、くも膜下出血、脳梗塞を起こしうる。くも膜下出血を発症するまでの期間は3日以内の報告が多い。頚椎のマッサージで起こることあり。50歳以下に多い
 ・頸動脈解離:前頚部に突発する激烈な痛み、脳梗塞やくも膜下出血を起こすことあり。50歳以下に多い

3.発熱を伴い神経学後遺症を残しかねない頸部痛
 ・髄膜炎:jolt accentuation of headache→1秒間に2-3回の速さで頭を水平方向に回旋させ頭頚部痛の増強が見られる現象(感度97%)、髄液検査(腰椎穿刺)前に、脳ヘルニアの既存と悪化を考慮して頭部CTを事前に行うことが推奨されている。

4.慢性進行性の神経症状を示す頸部痛
 ・筋萎縮性側索硬化症(ALS):頸椎症では起こらない舌萎縮、線維束収縮、下顎反射亢進、構音障害、嚥下障害を認める。
 ・パーキンソン病:振戦、無動、筋強剛、姿勢反射異常。

5.発熱を伴う激烈な頸部痛
 ・Crowned dens syndrome(CDS):軸椎歯突起を取り囲む十字靱帯にピロリン酸カルシウム結晶が沈着する。高齢女性に好発。後頭部痛、後頸部痛、頸部回旋痛を訴えるが、頸部前後屈は可能なことが多い。発熱、白血球増多、CRP上昇。CT検査で歯突起周囲の靱帯に石灰化を認める。D.D ;髄膜炎、硬膜外膿瘍、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、椎間板炎など
 ・石灰沈着性頚長筋炎:頚長筋にハイドロキシアパタイトの沈着が起こる2次性炎症性腱炎。発熱、白血球増多、CRP上昇。レントゲン頚椎側面像で後咽頭間隙の拡大、CTで石灰化、MRIT2強調で高信号

6.小児の頸部痛
 ・小児頚椎椎間板石灰化症:6-13歳に好発。著明な頸部痛で発症。男児に多く中下位頚椎間に多い。自発痛あり。原因不明。時に疼痛性に斜頸をきたすことあり。D.D環軸関節回旋位固定は自発痛が無く可動時痛のみ。治療は消炎鎮痛治療と頚椎カラー。1ヶ月ほどかかる。石灰が脱出してヘルニアや頚髄症を発症することがある。

7.高齢者の頸部痛
 ・様々な疾患の可能性がある。軽微な外傷で、環軸椎骨折や頚椎脱臼、脱臼骨折が起こりうる。

参考文献:Orthopedics 整形外科外来における他科疾患を見逃さないコツ 3.2017