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整形外科 外科
リハビリテーション科

股関節のスポーツ障害(レイヤー別アプローチ)

股関節は構造上、4つの層(レイヤー)で構成されています。その層別に疾患を考えると理解しやすい。

レイヤー1:骨軟骨レイヤー(骨、軟骨)
臼蓋形成不全、大腿骨寛骨臼の変形、動的なものとして大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)、大転子インピンジメント、下前腸骨棘インピンジメント

レイヤー2:不活性レイヤー(関節唇、関節包、靱帯)
股関節唇損傷

レイヤー3:ダイナミックレイヤー(筋肉、腱)
腸腰筋スナップ、弾発股、肉離れ、腱付着部の炎症・損傷

レイヤー4:神経メカニカルレイヤー(神経、血管)
 
股関節周辺のスポーツ外傷・障害

 股関節周辺のスポーツ外傷としては、大腿直筋損傷、上前腸骨棘裂離骨折、下前腸骨棘裂離骨折、内転筋損傷、ハムストリング損傷があります。スポーツ障害としては、大腿骨頚部疲労骨折、弾発股、腸腰筋スナッピング、腸脛靱帯炎、内転筋炎、恥骨結合炎、ハムストリング腱付着部炎があります。外傷、障害いずれにも該当するのが大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)としています。

 FAIはpincer タイプとcamタイプとがあります。スポーツで症状が出ることが多いのですが、camタイプはもともと出っ張っていてそれが運動で刺激されて痛みが生じると考えた方が良さそうです。いずれも出っ張りにより関節がインピンジメント(衝突)を起こし可動域の制限や痛みが出ることがあります。(関節唇損傷、軟骨損傷、変形性関節症が二次的に起こることがあります。)痛み止めなどの保存的な治療で改善しない場合は手術(インピンジメントの解消、関節唇修復術)を考慮します。

 大腿骨頚部疲労骨折はまれですがハイレベルのアスリートで起こりやすいです。初期ではレントゲンには所見が無いことがほとんどで症状によりMRIなどで精査します。レントゲンで上から下まで骨折線がつながっている場合は手術療法を考慮します。内側での疲労骨折は圧迫型疲労骨折、外側は牽引型疲労骨折となります。

 弾発股には外側型と内側型があり、内側型は腸腰筋スナッピングといい腸腰筋が股関節の前面を通るときに骨の出っ張りに擦れて起こります。股関節を屈曲し外転外旋を行うとゴリっと擦れてスナッピングし痛みが誘発されます。外側型が腸脛靱帯が大転子に擦れて症状を起こします。いずれも運動を控えて消炎鎮痛剤やストレッチなどの保存的治療をまず行います。改善しない場合は手術療法を考慮します。

 大腿直筋損傷、付着部炎はサッカーなどインステップ系のキックで起こりやすいです。肉離れや付着部の炎症、場合により小児の場合は骨端線損傷により離開することがあります。骨端線離開は1センチ未満は保存的治療を行います。離開が1センチ以上の場合は手術を考慮します。

 股関節外転筋群の障害としてオーバーユースによる筋筋膜炎があります。外転筋の付着部である大転子に強い圧痛を認めます。

大転子疼痛症候群(greater trochanteric pain syndrome ; GTPS)とは大転子に付着する様々な筋肉(外転作用として中殿筋、小殿筋、外旋筋として方形筋、梨状筋)、また大転子上を通る筋肉(大腿筋膜張筋、大臀筋、)や滑液包などが炎症を起こして大転子周辺に圧痛が生じる疾患です。MRIでT2強調像で高信号を認めることがあります。治療は局所の安静とストレッチ、特に体幹のバランスや姿勢異常があればこれを矯正します。
 
参考図書:こどものスポーツ外来