表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

<軟骨下脆弱性骨折 subchondral insfficiency fracture

骨粗しょう症だけでなく、若者でも過負荷で起こることがある。

定義:関節の明らかな外傷の既往がなく、関節面への繰り返す荷重負担または軽微な外傷によって生じる骨折

特徴:自然軽快することもあるが、関節面を圧壊し関節の破壊や壊死をきたすことがある。閉経後の骨粗しょう症によることが多いが、骨粗しょう症が無くとも過剰な負荷でも起こる。高齢者だけで無く若者に発症することもあるので注意が必要。

画像:早期ではレントゲンにほとんど異常を認めない。淡い骨硬化像→診断は困難。進行例:関節面圧潰、軟骨下骨での線状透亮像、嚢胞性変化、骨硬化像。(特発性骨壊死と極めて類似。基盤として軟骨下骨折がある。終末像)。診断はMRI。造営すると早期の虚血性壊死と鑑別できる。(DD:特発性大腿骨頭壊死)

MIRI:軟骨下骨に線状~帯状の低信号域、骨髄浮腫(水分に加えて病理的には骨髄壊死や繊維化、骨梁変化が生じている)

発生部位:大腿骨頭(骨頭上部前面に多く、1/3は臼蓋より外側で被覆が少ない例に多い)、膝関節(6割が大腿骨内側顆。他に脛骨内側顆、大腿骨外側顆、脛骨外側顆、顆間部)、距骨(距骨ドーム、舟状骨関節面)、中足骨頭(第2、第3中足骨骨頭、とくに骨頭背側)肩関節上腕骨骨頭での報告例もある。

項目

内容

定義

明らかな外傷歴なく、関節面への繰り返し荷重または軽微な外力で生じる骨折

好発年齢

高齢者(骨粗鬆症)に多いが、若年者でも過負荷で発症

特徴

自然軽快する例もあるが、関節面圧潰→関節破壊・壊死に進行することも

画像診断

初期はレントゲン異常なし。進行例では関節面圧潰、線状透亮像、嚢胞、骨硬化像。MRIが診断の鍵

MRI所見

T1:線状〜帯状の低信号域、T2:骨髄浮腫(壊死・繊維化・骨梁変化)

好発部位

大腿骨頭、膝関節(大腿骨内側顆が最多)、距骨、中足骨頭、肩関節


鑑別診断
 1)外傷性軟骨下骨折または疲労骨折・・・画像所見だけでは鑑別できない。外傷歴、生活歴、運動歴が有効
 2)一過性骨髄浮腫症候群(transient bone marrow edema syndrome):大腿骨頭(もともと一過性大腿骨頭萎縮症と呼ばれる)だけでなく、大腿骨内側顆、距骨にも起こるので総称として付けられた。通常は自然軽快。軟骨下骨に骨折線+のことあり(軟骨下骨骨折の合併→軟骨下脆弱性骨折の合併) 発生機序は不明
 3)虚血性骨壊死(avascular necrosis):本体は骨梗塞。周辺に骨新生。軟骨下骨等に骨吸収、骨折を起こす。)

鑑別診断一覧

疾患名

鑑別ポイント

外傷性骨折・疲労骨折

外傷歴・生活歴・運動歴が有効。画像のみでは鑑別困難

一過性骨髄浮腫症候群

自然軽快。骨折線合併例あり。発生機序不明

虚血性骨壊死(AVN)

骨梗塞+骨新生。造影MRIで血流評価が有効


大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折 subchondral insfficiency fracture of the femoral head:SIF>

・骨粗鬆症を有する高齢女性に多いが、若年男性にも発症することがある。(骨粗鬆症ではないYAM値80%以上の方にも多い)

・急激に発症する強い鼡径部痛、多くは一時的に歩行困難となる。

・X線では初期に異常所見を認めないことが多い。→MRI T1強調像骨頭内にびまん性に低信号、T2強調像で高信号。Bone marrow edema pattarn これに加えてT1強調像で低信号の不規則なバンド像

・DD:特発性大腿骨頭壊死 MRI。画像は似ている。造影MRIで近位骨片の血流がない(脆弱化骨折は近位骨血流がある)

・過負荷で骨頭圧潰

・治療:まずは免荷。骨粗鬆症が背景にある場合、テリパラチド製剤などで骨粗鬆症の治療を同時に行う。保存療法は約半数に奏功。残りは徐々に変形性股関節症が進行。なかには急速破壊型股関節症に移行することがある。この場合、手術。人工股関節置換術。発症初期の若者は骨頭温存手術も適応。

・予後:一定の見解は得られていない。高齢者の骨粗鬆例では免荷しても約半数がTHA施行となったという報告もある。

項目

内容

好発

高齢女性(骨粗鬆症)、若年男性(YAM値80%以上でも発症)

症状

急激な鼡径部痛、一時的歩行困難

画像

X線:初期異常なし。MRI:T1低信号、T2高信号、帯状低信号バンド像

鑑別

特発性大腿骨頭壊死(造影MRIで血流の有無)

治療

免荷+骨粗鬆症治療(テリパラチド等)。保存療法奏功:約50%

手術

進行例では人工股関節置換術(THA)。若年者は骨頭温存術も適応

予後

高齢者では免荷しても約半数がTHA施行となる報告あり


特発性膝骨壊死
病態は骨脆弱性を基盤とした軟骨下骨折による。(微細血管の塞栓説や軟骨下骨骨折へ関節液が流入して内圧が上昇説などは二次的変化でしかない。)大腿骨内側特発性骨壊死(spontaneous osteonecrosis;SON)は内側半月板後角の損傷が先行する。

・内側半月板後角損傷:小走りや階段を踏み外したりして、プチッと轢音がを関節内に感じ、膝窩部に激痛が走り、当日は歩行が困難などの症状がでる。→MRI 内側半月板後角の損傷→適切な治療.。脛骨内側顆や外側コンパートメント(大腿骨外側、脛骨外側)に生じるものは、大腿骨内側顆とは異なる病状や臨床経過をとる。( osteonecrosis-like- syndromeと呼ばれる)  

項目

内容

病態

骨脆弱性+荷重ストレスによる軟骨下骨折が中心

先行病変

内側半月板後角損傷(hoop機構破綻→内圧上昇→骨浮腫)

MRI

半月板損傷+骨浮腫。OAと鑑別困難な場合はMRI必須

半月板
切除後

同様の骨壊死が起こることがあるため注意


1.大腿骨内側顆骨壊死
 変形性膝関節症と異なり、安静時痛や夜間痛がみられる。多くは膝を捻るなどの外傷歴がある。急性発症では無く安静時痛が無い症例もある。初期にはX線では描出されない。

超初期にはMRIでも描出されないことがある。OAと診断して治療しても症状が長引く場合は、骨壊死を考慮してMRIを行う。

原因は骨粗鬆症のある内反アライメントを有する女性で荷重ストレスで軽微な外力が加わり軟骨下骨骨折が生じ、それが大腿骨内側顆骨折に発展するという説に加えて、最近では内側半月板の後角の損傷によりhoop機構が破綻し内側コンパートメント圧の上昇→骨浮腫が生じ不全骨折により骨壊死が生じるとされている。

半月板切除後にも同様の変化が見られることがあるので注意が必要。(内側半月板後角損傷の修復が重要)

Aglietti分類(膝骨壊死のステージ)

ステージ

所見

Stage 1

正常

Stage 2

荷重部の平坦化

Stage 3

骨透亮像

Stage 4

軟骨下骨の陥没

Stage 5

二次性OA変化


治療方針

保存治療 大きさが10mm以下 Stage3まで 自然治癒が望める→足底板+松葉杖歩行 3-6ヶ月経過を見る

手術 横径比50%以上、壊死面積500平方㎜以上 Stage4以上 骨切や人工関節(単顆置換、全置換術)

病変が小さくても内反アライメントがあると自然軽快はしにくい→早期の骨切り術
→半月板切除後にも同様に起こることがある

2.脛骨内側顆壊死
荷重ストレスによる発症する。脛骨近位部は血行がよく、虚血は起こりにくいのでCharcot関節やステロイド関節症との鑑別、不顕性骨折などにも注意が必要。

3.大腿骨外側顆骨壊死
大腿骨内側顆と比し頻度は少ない。痛みもそれほど強く無く、夜間痛も無い。

いずれもヒアルロン酸等の注射、消炎鎮痛剤、などを用いて症状の改善を図る。手術的としては骨ドリリング、掻爬、骨移植、単顆置換術などを行う。