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| 整形外科 外科 リハビリテーション科 |
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【2025-11-18 JST】 剣状突起痛は、胸骨遠位端に位置する剣状突起そのもの、あるいは周囲の軟部組織に生じる限局性疼痛を主体とする臨床概念です。 1.病態と臨床的背景剣状突起は、骨と軟骨の移行が残存しやすく、個人差の大きい領域です。鉤状の屈曲や、前方あるいは後方への突出を示す形態が一定割合でみられ、こうした形態が胸壁の運動に伴う牽引力や圧迫力を局所に集中させると考えられています。 2.症状典型例では、剣状突起の骨性構造に一致する鋭い圧痛が主症状となります。疼痛は姿勢変化や体幹前屈で誘発されやすく、食後の胃内容膨満によって増悪することもあります。 3.鑑別診断剣状突起痛は一見すると心臓・消化器・呼吸器疾患の胸部症状と類似するため、系統的な鑑別が不可欠です。 整形外科領域では、Tietze 症候群や肋軟骨炎が近縁疾患として挙げられます。肋軟骨炎は複数肋軟骨に散在する圧痛が特徴で、剣状突起痛のように一点へ収束する疼痛とは異なります。 心臓疾患では、虚血性心疾患が最重要の除外項目です。圧迫感や労作時の増悪といった性状を示し、局所圧痛で再現されない点が決定的に異なります。大動脈疾患も急激な背部痛や血圧差を呈し、剣状突起痛とは明確に異なる経過を辿ります。 消化器疾患では、胃・十二指腸疾患や胆嚢・膵疾患が胸部〜心窩部痛として誤って想起されることがあります。しかし、これらは剣状突起の骨性ポイントで疼痛が再現されないため、触診が鑑別に極めて有用です。胸膜炎など一部の呼吸器疾患では深呼吸で増悪しますが、骨性圧痛を示さない点が典型です。 4.検査X線側面像では剣状突起の屈曲や肥厚、骨棘化などの形態異常が確認できることがあります。 5.治療標準化された国際ガイドラインは存在しませんが、既報では保存療法が中心となります。 6.注意点・例外剣状突起痛は良性の局所痛として扱われがちですが、胸部痛の初期段階では虚血性心疾患や大動脈疾患、胆嚢・膵疾患などの致死的病態と区別がつきにくいことがあります。 |