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整形外科 外科
リハビリテーション科

腰椎椎間板ヘルニア Lumbar Disc Herniation

 腰椎の椎間板が加齢等により変性し外側で支えている線維輪を破って髄核が飛び出します。前側より後方、後側方の壁が弱いので後ろ側にでることが多いです。ヘルニアの付近に神経があれば、それを圧迫することにより症状を引き起こします。腰痛や下肢痛がでます。例えばL4/5レベルの椎間板ヘルニア(中央型)ではL5の神経障害を、外側型ですと一つ上のL4の神経障害を引き起こします。

 髄核脱出を伴った椎間板ヘルニアは平均4ヶ月で再吸収されることが分かっており、痛みやしびれに対して保存的治療を行います。馬尾神経障害による膀胱直腸障害(排便や排尿が分からなくなる)がでた場合は、24時間以内に手術を行う必要があります。下肢の麻痺(筋力低下)が著しい場合も相対的に手術適応があります。

 大部分の腰椎椎間板ヘルニアは手術を行うことなく保存的に改善しますので過度の心配は不要です。

 鑑別としては腰椎分離症、化膿性脊椎炎、脊椎腫瘍、筋筋膜性腰痛症などがあります。鑑別には臨床症状、経過に加えてレントゲン撮影、MRI、CT、血液検査が有効です。
L2椎体後面になだらかな隆起を認めます。椎間板ヘルニアが垂れ上がって起こります。腫瘍性病変や血腫との鑑別が必要です。L3/4では通常よく見られる椎間板ヘルニア。ほか椎間板変性所見あり。
 姿勢による腰への負担の変化 

 ・椎間板にかかる圧
 臥位を1として、座位5.6、立位4、立位前屈位6、立位前屈位で物を持つ8.8 
 (井須豊彦 しびれ、痛みの外来Q&Aより引用)

 
 腰椎椎間板ヘルニアでは臥位が楽で、立位前屈位で物を持つのが悪化要因となります。前方に物を持つと下向きの力のモーメントが働き腰椎をてこの原理で強く圧迫します。従って椎間板ヘルニアの症状予防には前屈した姿勢で重いものを持たないことも大切です。
  
本日のコラム196 頚が悪くて腰の症状が出ることがあります

 頚椎の変形や椎間板ヘルニアで脊髄を圧迫すると手や足に症状が出ることがあります。度々問題となるのは、頚椎が悪いのに腰や足の症状が出る場合です。こういった場合、腰部に狭窄などの病変が無いか調べることが多いのですが、腰にはあまり大した所見が無いのに、頚椎で著しい狭窄を起こしている場合があります。

 このような場合、頚椎から手術を行って経過をみて、腰部の症状である間欠性跛行が強く出るときは、腰の手術を追加します。

 頚髄症で起こる腰部以下の症状としては、S1領域の坐骨神経痛を起こすケースが多いようです。また歩行障害は痙性麻痺によるもので、これに腰部から来る間欠性跛行が混ざるようにして症状を発しますので、臨床所見をしっかりと把握することが大切です。

 脊椎は頚椎、胸椎、腰椎からなり、1箇所の病変だけではなく数カ所の障害により症状を起こすこともよくありますので,注意が必要です。
 
 
本日のコラム277 運動選手の腰椎椎間板ヘルニア〜治療方針

 原則として保存療法を行います。NSAIDsやプレガバリン等を服用します。

 脱出型の椎間板ヘルニアは、マクロファージにより貪食され縮小、消失することも期待できるので3ヶ月は保存療法を行います。MRIにおける脱出ヘルニアの消失期間は平均4ヶ月とされていますが、自験例では1年掛かったケースもあります。脱出型の90%は縮小しますが、10%は変化しないとされます。

 実際、半年後に撮影したMRIで更に突出していることもよくあります。従って、諦めずに治療することが大切かと思います。

 手術適応は、絶対適応として膀胱直腸障害があります。排尿、排便が出来なくなる状態で緊急手術を要します、48時間以内とされていますが可能な限り早いほうが良いでしょう。(24時間以内)

 相対的な手術適応として、痛みが強い場合や麻痺が進行するケースです。

 手術後のヘルニアの再発は同じレベルが多く、5年以内で5−10%とされています。いずれにせよ手術でも完璧は無いと言えます。
 
  
本日のコラム280 運動選手の腰椎椎間板ヘルニア〜治療方針2

 椎間板ヘルニアによる痛みは、周辺筋肉の緊張を起こし経時的に伸びにくくなります。硬くなる=タイトになる→タイトネス(名詞)が出現するといいます。

 このタイトネスはヘルニアに対し二次的に起こってきたものですが、タイトネス自体も運動時に痛みを引き起こしますし、また可動域の低下を来します。従って運動パフォーマンスを回復させるにはヘルニアの痛みを誘発させないようにしながらタイトネスを解除する必要があります。

 椎間板ヘルニアにおいて椎間板の内圧をコントロール(できるだけ上昇しないように心がける)しながらタイトネスを解除します。内圧は、立位よりも腰椎前屈、座位で増大します。単純なくっきょおく、回旋よりも屈曲+回旋といった複合動作で線維輪の剪断力をもたらします。

 従って、各種エクササイズを実施する場合には、骨盤前傾を保ちながら内圧の上昇を起こさないようにします。すなわち腰椎前弯の維持+骨盤前傾をつようにします。

 骨盤の前傾を誘導するために、キャットポジションによるストレッチ(四つ這いになり骨盤の前傾する)、仰臥位で膝関節屈曲を保ちながら股関節を片方ずつ屈曲します。

 ハムストリングのタイトネスには、座位で腰椎の前弯を保ったまま、ストレッチします。大殿筋のストレッチは臥位で膝・股関節を屈曲し、内転させます。

 坐骨神経痛のある場合は、いわゆるSLR運動(下肢挙上訓練)、腰椎前屈を行うと症状が悪化したり再燃することがあるので注意が必要です。

 椎間板の水分量の保持には早歩き〜ジョギングが有効との報告があります。(秒速2m程度)
 
   
 本日のコラム282 なぜ椎間板ヘルニアで腰痛が起こるのか?

 腰痛の定義は種々ありますが、菊池の定義では、腰痛を「解剖学的な腰仙椎部に局在する疼痛で、神経根に由来する下肢痛や馬尾由来の下肢症状を含む」としています。

 神経根部の圧迫では腰痛と患側優位の下肢痛が生じます。後方・正中部のヘルニアは、脊髄神経前枝から分岐した脊椎洞神経(反回髄膜神経)支配をうけているとされています。

 この脊椎洞神経は、椎間板全周、外輪状線維や後縦靱帯に分布しているので、後方・正中にヘルニアにより圧迫すると侵害受容器より痛刺激として伝わるのではと考えられています。

 馬尾神経を圧迫、刺激しなくても痛みが生じる訳です。
 
  
本日のコラム284 腰椎椎間板ヘルニアの手術治療のタイミング

 保存治療中に馬尾症候群を呈する場合は、手術治療に速やかに移行する方がよいとされています。膀胱直腸障害は緊急手術の対象ですし、進行する運動麻痺は相対的手術適応になりますが、手術するタイミングを逃さないように心がけます。これら以外の症状では、通常保存治療を三ヶ月程度行ってもADLの障害をきたす疼痛が持続する場合には、患者とよく話し合って手術をするか決めることになります。

 一般的に、椎間板ヘルニアが小さいほど症状は緩和しにくく、再吸収が見込まれる穿破型のヘルニアでは平均4ヶ月程度で縮小し症状が改善することが見込まれますので、あくまでも症状との兼ね合いですが、患者さんの意向をくんで粘ってみることもあります。当院の例では、巨大ヘルニアが一年後にはきれいに消失し症状も無くなったこともあります。

 最近、分かってきたこととして、穿破していない小さな椎間板ヘルニアの症状ほど改善しにくく手術に移行するケースが多いと統計では示しています。ですからヘルニアが小さいから安心という訳ではありません。

 それではさっさと手術をすれば良いかというとそうでもなく、術後合併症などを勘案すると悩むところとなります。最近では、手術適応は減少する傾向にあり、膀胱直腸障害が出ているケース(24もしくは48時間以内の緊急手術適応)、保存治療に反応せずに日常生活に痛みや運動麻痺により支障が出るケース(相対的手術適応)では手術を行う方向で検討するのが良いと考えています。


 *腰椎椎間板ヘルニアのMRI分類

 Type1 膨隆型(contained type)、Type2 皮膜穿破型、Type3 遊離脱出型 (2,3はuncontained type)
 →皮膜とは、椎間板後方にある線維輪外層または後縦靱帯