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池田医院・診療日記
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

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平成28年1月1日(金)元旦 
平成28年1月2日(土)休診
平成28年1月3日(日)休診
平成28年1月4日(月)休診
 
平成28年1月5日(火) 

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 本日より通常どおり診療を行っています。

 
平成28年1月6日(水)
   脊髄癒着性くも膜炎 脊髄くも膜嚢胞 adhesive arachnoiditis

 脊髄神経は内側から軟膜、くも膜、硬膜、三種類の膜で覆われています。くも膜と軟膜の間の空間をくも膜下腔といいます。
くも膜が炎症を起こして肥厚や癒着を起こします。またくも膜下腔に嚢胞を形成し神経を圧迫することがあります。

 はっきりとした原因は分かっていませんが、椎間板ヘルニア、感染、腫瘍、脊髄造影、脊髄手術、髄腔内への穿刺や薬剤注入が関連すると考えられています。

 くも膜炎の症状は関連する神経支配領域の痛み、しびれ、感覚障害が生じます。のう胞による症状は脊髄の圧迫レベルで異なり、四肢麻痺、歩行障害、排尿障害などが起こります。検査で偶然見つかった無症状のくも膜嚢胞は基本的には経過観察を行いますが、圧迫症状を引き起こしている場合は、バイパス手術を行います。
 
 
平成28年1月7日(木) 化膿性脊椎炎 椎間板炎 pyogenic spondylitis , discitis

 化膿性脊椎炎や椎間板炎は細菌の感染により起こります。起炎菌は黄色ブドウ球菌であることが多くMRSAが増えています。また日和見感染が半数以上を占め大腸菌、緑膿菌、腸球菌なども増えてきています。

 症状は感染部位の背部痛、微熱が中心で早期にレントゲンを撮影した場合には所見が無いこともよくあります。(レントゲンでの変化は発症2-8週間後と言われています。)

 疑われる場合は血液検査やMRIによる精査をただちに行うようにします。鑑別診断としては脊椎カリエス、転移性脊椎腫瘍、椎体圧迫骨折が挙げられます。結核菌は椎体を主に破壊しますが一般細菌による椎間板炎では椎体は保たれています。転移性脊椎腫瘍は椎弓部たその後方に浸潤する傾向があります。

 化膿性脊椎炎の治療は原則、保存療法を行います。全身状態が許されるのなら血液培養に加えて生検を行い起炎菌に準じた抗生剤を投与します。最近では高圧酸素療法が積極的に行われるようになっています。

 手術適応は骨破壊が著しく不安定である、神経麻痺が生じている、保存療法で効果がない場合に選択します。感染部を力学的に安静をはかるために掻爬、ドレナージに加えて後方固定を行います。
 
 
平成28年1月8日(金) 恥骨結合炎 恥骨骨炎 鼡径部痛症候群 pubic osteitis

 そけい部から恥骨にかけて痛みが出る疾患を総称して鼡径部痛症候群と言います。そのなかで恥骨結合周辺に起こる痛みを恥骨結合炎、恥骨骨炎と呼びます。恥骨骨炎と恥骨結合炎は同義語で恥骨結合周辺の炎症に起因する痛みを意味します。以前は感染によるものと思われてきましたが、、スポーツ障害でよく起こり、またMRIの発達により恥骨結合付近の疲労骨折がよく起こっていることが分かりました。

 治療は局所の安静をはかることが大切です。上肢〜体幹の運動を中心に行い治るのを待ちます。痛みを我慢して運動を行うと更に症状は悪化しますので注意が必要です。
 
 
平成28年1月9日(土) 大殿筋症候群 Gluteus Maximus Syndrome

 大殿筋症候群と言うと少し大げさに感じますが、要するに大殿筋の使いすぎによる慢性炎症を意味します。(米国ではGluteus Maximus Syndromeといい、ICD10:国際疾病分類第10版にも掲載されています。日本ではあまりこのような言い方はしません。むしろ筋筋膜炎と診断します。)

 大殿筋は臀部を伸展する作用をしています。この筋肉を使いすぎたり小さな外傷を繰り返すと筋・筋膜疼痛症候群を引き起こします。症状は臀部の痛みです。臀部から尾骨に放散します。トリガーポイント注射が効果的です。

 鑑別疾患としては股関節疾患、臀部滑液包炎、上殿神経の絞扼障害などがあります。 運動を繰り返すとお尻の筋肉が痛くなると考えて頂いたら、多くの人が経験していると思います。

 大殿筋への負荷のかかる運動を休止もしくは減少させてストレッチと温熱治療を行うようにします。痛みが強い場合は短期間のみ消炎鎮痛剤を使うのもよいでしょう。
 
平成28年1月10日(日)
平成28年1月11日(月) 成人の日
 
平成28年1月12日(火) 環軸関節回旋位固定 atlantoaxial subluxation

 子供が急に頚を痛がって斜くようになります。(斜頚位)斜頸を起こす原因には、炎症性と外傷性を考え、それぞれ咽頭部の感染、環軸椎の亜脱臼(環軸関節回旋位固定)の有無を調べます。レントゲンで小児の場合、環軸関節の前後の隙間4ミリ以内、歯突起前方の軟部組織は2-7ミリが正常でそれ以上に開いている場合は何らかの異常が隠れている可能性があります。

 環軸椎回旋位固定は、開口位でレントゲンを撮影します。環軸椎関節で歯突起の位置に左右差がある場合は亜脱臼をしています。亜脱臼の治療は初期は頚椎カラーで経過をみる、もしくは牽引治療を追加する。1週間以内に改善しない場合は入院して持続牽引を行います。治療せずに長く放置すると固定されてしまい元に戻らなくなることもありますので注意が必要です。
 
 
平成28年1月13日(水) 坐骨滑液包炎 Ishiogluteal Bursitis

 坐骨結節と大殿筋の間にある滑液包が外傷や繰り返す微少な外傷により炎症を起こして痛みが生じます。坐骨結節直上に圧痛がでます。また同部にしこりを認めることがあります。

 鑑別疾患としては骨盤部の炎症、腫瘍性病変、骨折、大腿屈筋腱炎があります。治療は局所の安静と消炎鎮痛剤、温熱治療などが有効です。ステロイドの局注を行うこともあります。
 
 
平成28年1月14日(木) 肛門挙筋症候群 Levator Ani Syndrome

 外国の成書にはよくあると記載されていますが、実際のところそれほど見つけることはないと思います。肛門を絞める筋肉である肛門挙筋の筋筋膜性疼痛を意味します。

 マウンテンバイクや乗馬で微少な外傷を繰り返すと起こるとされていますが、はっきりした原因がなくとも発症することもあります。症状は肛門周辺の痛みで、所見としては肛門周囲の肛門挙筋に圧痛を認めます。

 鑑別診断としては痔疾、直腸の炎症性疾患・腫瘍などがあります。

 ストレスや排便でも悪化しますので注意が必要です。治療は対症療法になりますが、痛みを起こす運動、動作を控える、排便の習慣を規則正ししくする、ストレスを控えるなどがあります。
 
 
平成28年1月15日(金) 尾骨痛 Coccydynia

 尾骨の痛みは尾骨の打撲や骨折で起こりますが、慢性の繰り返す刺激でも起こります。尾骨骨折や尾骨の関節の障害、仙尾骨靱帯の損傷などが原因となります。

 タクシードライバーのように長時間座位を保持する場合にも尾骨部痛が起こることがあります。

 鑑別は直腸疾患、仙骨・尾骨腫瘍などがあります。レントゲン撮影に加えてCTやMRIが有効です。

 治療は病状に応じて行います。
 
 
平成28年1月16日(土)
 腸恥包炎(腸恥滑液包炎) Iliopectineal Bursitis

 腸恥隆起と腸腰筋の間にある滑液包が繰り返す運動や微少な外傷などによって炎症を起こす病気です。腸恥関節包は股関節の関節包と通じていることが多いとされています。

 症状は股関節前面の痛みと鼡径部痛です。鑑別診断としては骨関節炎、腫瘍性病変、関節リウマチ、大腿骨頭壊死などがあります。

 腸恥包炎は超音波断層撮影で股関節前面〜その周辺に単房性もしくは多房性の嚢胞を描出することがあります。

 治療は対症療法となります。
 
平成28年1月17日(日)
 
平成28年1月18日(月) 幻肢痛 Phantom Limb Pain

 下肢を切断後、失われた足の痛みを感じることがあります。症状の程度の差はありますが切断を受けたほとんどすべての患者に起こるとされています。

 原因は不明ですが脳が痛みを覚えているという説があります。治療は投薬、ミラー療法が有効です。また「脳にこれは痛くはないんだと唱える」のも有効とされています。
 
 
 
平成28年1月19日(火) 大転子滑液包炎 Trochanteric Bursitis

 大転子滑液包は大転子と中殿筋腱と腸脛靱帯との間にあります。打撲などの急性外傷や運動などで微少な外傷を繰り返すと起こります。股関節炎と併発することも多く注意が必要です。

 また大腿皮神経絞扼障害との鑑別が難しいことがありますが大転子に圧痛があるか否か、チネルサインの有無、大腿外側の感覚障害の有無などを総合して判断します。

 治療は局所の安静、投薬、ストレッチ、注射などがあります。
 
 
平成28年1月20日(水) 膝周辺の滑液包炎 Bursitis around knee joint

 膝周辺の滑液包炎は部位により上膝蓋滑液包炎、前膝蓋滑液包炎、浅下膝蓋滑液包炎、深下膝蓋滑液包炎があります。

 上膝蓋滑液包炎:大腿四頭筋〜大腿四頭筋腱の深部
 前膝蓋滑液包炎:膝蓋骨前面
 浅下膝蓋滑液包炎:膝蓋腱前面
 深下膝蓋滑液包炎:膝蓋腱後面
 ベーカー氏嚢胞:膝裏
 鵞足滑液包炎:膝内側下方

 いずれも打撲などの外傷や繰り返す運動による刺激で発症します。対症療法で消炎鎮痛剤、湿布、膝装具、滑液包への注射などが行われます。
 
 
平成28年1月21日(木) テニス脚 Tennis Leg

 腓腹筋の肉離れのことで、テニスなどの運動で急激な力が掛かるとポンとはじけるような音、ショックとともに急速に痛みが出ます。急性期はRICEを行います。筋の修復はおよそ4週間ほど掛かります。

 急性期は安静にし、痛みが軽減してくれば徐々にストレッチなどを行います。激しい運動は更に病状を悪化させますので控えるようにします。急性期が過ぎれば温熱治療などの理学療法も有効です。

 鑑別として下肢コンパートメント症候群、深部静脈血栓症があります。
 
 
平成28年1月22日(金) 横足根関節炎=Chopart関節炎 arthritis of the midtarasal joints

 ショパール関節は踵骨と立方骨の関節、距骨と舟状骨の関節を合わせたものを言います。足関節のやや前方に位置します。関節と言ってもそれほど可動域はありません。

 かかとを挙げる動作を繰り返したり、外傷などで起こります。治療の基本は痛む動作を控えることです。また消炎鎮痛剤、温熱治療、局所注射などが有効です。
 
 
平成28年1月23日(土)
 前足根管症候群(深腓骨神経麻痺) Anterior tarsal Tunnel Syndrome

 前足根管症候群(深腓骨神経麻痺)は1−2趾間部にしびれがでる病気です。足関節の前面を通る深腓骨神経が伸筋支帯や短指伸筋で圧迫されて絞扼性神経障害を起こすことによって症状が出ます。

 原因のほとんどが靴紐の絞めすぎです。甲高の人が合っていない靴を履いても起こります。ヨーロッパ系のおしゃれな靴は甲が低く足先も細長くなっています。これはそういう足をした人が多いためでアジア系の甲高扁平な足ではかなり窮屈でこのような障害を起こしやすいと考えます。

 対策は靴紐を強く絞めない。また甲が強く締まる靴は履かないようにします。サンダルやスリッパでも同様の症状がでることがありますので注意が必要です。

 その他、ガングリオンなどが神経を圧迫して起こることもあります。

  後脛骨神経麻痺を起こす足根管症候群を後足根管症候群とし、前方の深腓骨神経麻痺(足背〜I、2趾間部のしびれ、まれに短指伸筋麻痺)を起こすものを前足根管症候群と呼ぶことがあります。
 
平成28年1月24日(日)
 
平成28年1月25日(月) Preiser病(舟状骨無腐性骨壊死) Preiser disese

 まれな疾患で原因は不明。舟状骨周囲の痛みと圧痛がでます。レントゲンでは骨硬化や分節化を認め、MRIではT1強調で低信号、T2強調で高信号を認めます。治療は軽症の場合は外固定、重傷の場合はドリリング、関節固定術、手関節除神経術等の手術が考慮されます。
 
 
平成28年1月26日(火) 月状骨周囲脱臼 Perilunate Dislocation

 月状骨周囲脱臼は実際に経験することはまれで、高エネルギー外傷(高所からの落下、オートバイ、競技自転車などからの落下)で手関節が過背屈されるとおこります。

 舟状骨の骨折を伴うことも多いとされます。治療は脱臼の整復です。受傷2週間以内ですと徒手整復を行いますがそれ以上経過すると観血的に行います。

 月状骨周囲脱臼はしばしばその配列の複雑さから見逃されることが多いとされています。
 
 
平成28年1月27日(水)
 ジャージーフィンガー jersey finger

 ラグビーのタックルで相手の着衣に指が引っかかり強制的に過伸展されて深指屈筋腱が断裂する外傷です。環指に多く見られます。第一関節(DIP関節)が屈曲できなくなります。屈曲障害がそれほどはっきりしないこともありますので注意が必要です。

 いくつかのタイプに分けられていますがいずれも早期に腱縫合を行うようにします。断端部位の位置は超音波断層撮影を行うと分かりやすいです。

 最近はラグビージャージも進化しており、昔に様にダボダボで指が引っかかりやすいものからフィットジャージといってぴちぴちで掴みにくいものに変わってきているので、その分こういった外傷は減っている可能性があります。
 
 
平成28年1月28日(木)
 バーナー症候群 Burner Syndrome

 外傷により頸部を側方に捻った時に、神経根、神経叢が牽引されたりインピンジメントを起こして、頸部から上肢に電気が走り焼けつくような痛みやしびれ、時に脱力がでます。

 症状はほとんど一過性ですが、繰り返すと症状が数ヶ月単位で長引くことがあります。重症例になると筋力低下や知覚障害が一年以上残存します。鑑別は骨折、椎間板ヘルニアなどがないことをレントゲン、MRI、CTなどで確認します。


 治療は頸部の安静を行います。痛みやしびれが継続する場合は消炎鎮痛剤や頚椎カラーなどを使います。急性期が過ぎれば温熱治療や頚椎牽引などを行います。
 
 
平成28年1月29日(金)
 骨盤裂離骨折

 骨盤にはさまざまな筋肉が付着しており強い力で収縮すると付着部で骨折を起こします。中高生に多く、ランニング、スタートダッシュ、ジャンプ、キックなどのあとに骨盤やお尻に強い痛みが生じます。

 裂離骨折:筋や腱に引っ張られて剥がれ  るように骨折すること

 上前腸骨棘裂離骨折、下前腸骨棘裂離骨折、坐骨結節裂離骨折、腸骨稜裂離骨折などがあります。

<付着する筋>
上前腸骨棘:大腿筋膜張筋、縫工筋:スタートダッシュ
下前腸骨:大腿四頭筋の直筋:キック
坐骨結節:大腿二頭筋(長頭)、半腱様筋、半膜様筋、大内転筋、短内転筋(坐骨下枝)、大腿方形筋、下双子筋:全力疾走、跳躍
腸骨稜裂離骨折:広背筋、大殿筋、大腿筋膜張筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋 :スイング
 
 治療はほとんどが保存的治療で治ります。ただし骨片が離れている場合や早期復帰を希望する場合は手術を行うことがあります。


 上前、下前腸骨棘裂離骨折は1−2週間の安静と免荷歩行(股関節軽度屈曲位)。レントゲンで骨癒合が得られたらランニング開始。8-12週で復帰。

 坐骨結節裂離骨折は4週間の免荷、12-16週で復帰。2cm以上の転位(保存治療では疼痛残存、坐骨神経症状がでることがある)で手術を考慮するが、必ずしも一定の見解はない。

 腸骨稜裂離骨折は安静ののち、2-3週間で歩行開始、6−8週間で復帰。

 予防は入念なストレッチを行いましょう。 

 
平成28年1月30日(土)
 股関節唇損傷 Acetabular labral tear

 クラブ活動などの運動で股関節の痛み、引っかかり感が出てきます。特に股関節を内旋・外旋すると痛みが増強します。関節がずれるような感覚がでることもあります。

 鑑別としては恥骨結合炎、大腿骨頚部疲労骨折、股関節周囲筋腱付着部炎などがありますのでレントゲンに加えてMRIを行います。

 治療は保存的治療を行い、症状が改善しない場合は鏡視下手術を行います。損傷した関節唇に対してシェーバー、パンチ、部分切除、トリミング、縫合などを選択します。
 
平成28年1月31日(日)